待望の赤ちゃんを妊娠したとき、大きな喜びと共に「ちゃんと出産を迎えられるのだろうか」と不安を抱く方は少なくありません。妊娠における大きな不安は「流産」です。流産したケースのほとんどは妊娠初期に起こるとされていますが、原因は何なのでしょうか?そして、初期流産を防ぐための方法にはどんなものがあるのでしょうか?
今回は初期流産の基礎的な知識に加え、予防にまつわる情報をまとめてお伝えします。繰り返す流産に悩んでいる方もぜひご一読ください。
初期流産(早期流産)とは、妊娠12週未満で起こる流産のことです。
・初期流産…妊娠12週未満
・後期流産…12~22週未満
・死産(IUFD)…22週以降
流産全体のうち、およそ8割が初期流産といわれています。なぜ流産は妊娠初期に起こりやすいのでしょうか。
初期流産の原因は、ほとんどが赤ちゃんの染色体異常です。染色体にはヒトの身体が正常に機能するための遺伝子が含まれています。この染色体の一部が過剰だったり、欠損していたり、形がいびつだったりすると、生命を維持しきれず流産してしまうことがあるのです。
染色体異常による流産は、母体がどんなに注意して過ごしていても防げるものではありません。流産した方の中には「妊娠前後に立ち仕事や運動をしたのがいけなかったのでは?」と自分を責める人もいますが、初期流産で母体の行動が影響するケースはごく少ないとされています。
流産が起こる確率は全妊娠のおよそ15%です。しかし、この確率は年齢によって変化します。虎ノ門病院産婦人科における1989~1991年のデータによると、25~34歳までの自然流産率は10%前後ですが、35歳からはおよそ20%に増加。40歳以上では40%超となっています。
年齢によって流産が増えるのは、受精卵の染色体異常が加齢とともに増加するからです。受精卵の染色体異常を治療する方法はなく、数的異常のある受精卵は約75%が妊娠8週までに流産してしまいます。
流産は原因や状態によってさまざまな呼び方があります。
(化学流産)
産婦人科のエコー検査で妊娠が確定する以前、つまり超初期の流産です。妊娠検査薬が普及したことで発見されるようになりましたが、過去には普通の生理と混同することが多かったと考えられます。治療はとくに必要なく、経過観察をして過ごします。
(稽留流産)
出血や腹痛はないものの、お腹の中で胎児が死亡している状態です。稽留流産の場合は胎児が自然に排出されるのを待つか、人工的に摘出するかのいずれかを選択して治療します。
(進行流産)
子宮内容物が外に出てくる最中の流産です。出血や腹痛を伴います。
(不全流産)
胎児が一部だけ排出されている状態の流産です。子宮にはまだ内容物が残存しており、人工摘出術が必要な場合もあります。出血や腹痛を伴います。
(完全流産)
流産して胎児が完全に排出された状態です。出血や腹痛は治まっていることが多いでしょう。
(感染流産)
ウィルスや細菌の感染によってひき起こされる流産です。B型肝炎・サイトメガロウイルス感染症・風邪のほか、クラミジアなどの性感染症が原因となることもあります。
(反復流産)
2回繰り返している流産です。頻度は2~5%ほどです。
(習慣流産)
3回以上繰り返している流産です。頻度はおよそ1%で、子宮の形質異常や染色体異常などさまざまな要因が考えられます。精密検査をしても原因不明であることが少なくありません。
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初期流産しているときに、母体が感じる異変や兆候はあるのでしょうか。ここでは初期流産の症状や、症状が出ているときの行動について解説します。
初期流産で現れる主な症状には以下のものがあります。
・生理のような性器からの出血
・腹痛
・腰痛
出血は、わずかに血がにじむ程度から生理と同じくらいの量までさまざまです。流産しているときは腹痛や腰痛、お腹の張りを感じますが、中には痛みや出血がまったくないのに流産していたというケースもあります。
それまで感じていたつわりがフッと無くなり「もしかして流産?」と不安になる妊婦さんがいらっしゃいますが、流産とつわりの関連は曖昧です。つわりがあっても稽留流産していたり、逆につわりがなくなっても経過は順調だったりとケースバイケースなので、つわりの有無だけで流産の判断はできません。
妊娠が順調でも少量出血することはあります。病院に行くかどうかを判断する基準は出血の程度です。
出血が少なく腹痛もない場合は、次の健診もしくは翌日の診療時間まで待ってもいいでしょう。たとえ流産が原因の出血だとしても染色体異常によるものであれば止めようがなく、早急に病院に行ったとしても結果は変わりません。
出血が生理と同様に多く腹痛がひどいときは、進行流産の可能性があります。大出血でショックを起こすと母体に危険が及ぶので、診療時間外でも早急に病院を受診しましょう。
切迫流産とは「通常時より流産のリスクが高まっている状態」を指します。「流産」という言葉を含んでいるのでドキッとしますが、実際に切迫流産と診断された妊婦さんの90%ほどは無事に出産を迎えており、必ずしも流産につながるとは限りません。
切迫流産と診断されたときは、安静に過ごすのが最善策です。
安静度Ⅰ:長時間労働や家事は控える。外出は最低限に。重いものは持たない。
安静度Ⅱ:仕事はできれば休職し、家事も控える。自動車や自転車の運転は原則禁止。
安静度Ⅲ:休職して自宅で過ごす。入浴はシャワーのみ、週2回を目安にする。
安静度Ⅳ:入院が必要。ベッド上で過ごす。シャワーも含め入浴禁止(清拭)。
上に示したのは安静度の目安です。どのくらい動けるかは症状によって異なるので、主治医の指示に従いましょう。必要に応じて子宮収縮抑制剤、感染予防の抗生剤を処方されることがあります。
初期流産を予防するには、どのように暮らしていけばいいのでしょうか。具体的な方法について紹介します。
流産を事前に防ぐために心がけたいのは以下の方法です。
・重いものを持たない
・激しい運動は避ける
・子宮の形質異常がないか妊娠前に検査を受ける
・手洗いやうがいで感染予防をする
・飲酒・喫煙をしない
・カフェインや辛い物の過剰摂取を避ける
ですが、流産のうち初期のものはほとんどが染色体異常によるものです。染色体異常が原因の流産にはどう対策すればいいのでしょうか。
前述したように、受精卵の染色体異常を治療する方法はありません。したがって初期流産を防ぐには、着床が成立する前に染色体異常のない受精卵を見分ける必要があります。
具体的な方法は、着床前診断です。着床前診断とは体外受精させた受精卵を胚盤胞胚まで育て、遺伝子や染色体に問題がないものを子宮へ戻す方法です。つまり、着床前診断を受ければ初期流産のリスクを減らすことができます。
正常な胚を得られるかどうかは個人差があり、着床前診断さえ受ければ100%赤ちゃんを授かれるわけではありません。しかし繰り返す流産による精神的、肉体的な負担を軽減できるのは大きなメリットといえるでしょう。
着床前診断を受けるには、日本産科婦人科学会の承認を受けた産婦人科クリニックを通じて個別に審査を受ける必要があります。審査には2回以上の流産歴などの条件があり、満たさない場合は受けられません。
ですが最近は「条件を問われない着床前診断」が登場しています。株式会社B&C Healthcareの着床前診断プログラムは、受精卵だけを米国機関へ輸送して着床前診断をおこなう方法です。「過去の流産歴はないけれど年齢的に心配…」という方でも着床前診断を受けることができます。
染色体異常は加齢で増えていきます。これから妊娠出産を予定している方は、着床前診断について一度資料を取り寄せてみるといいでしょう。
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初期流産の原因は染色体異常が8割を占め、着床したあとは成すすべがありません。ですが着床前診断で検査すれば、初期流産を減らせる可能性があります。年齢的に気になる方は検討してみてはいかがでしょうか。
株式会社B&C Healthcareでは、こうしたリスクをできるだけ避けたいと考えている方へ着床前診断をおこなっています。興味のある方は、手段として検討ください。
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