「もしかして不妊かも…」と思っても、いざ病院に予約を入れるときは勇気が要るものです。そもそも、不妊治療はどういうタイミングで始めればいいのでしょうか?また、初めての受診ではどんな準備をしていけばいいのでしょうか?
今回は初めての不妊治療にまつわる不安を解消すべく、知っておきたいポイントについてまとめました。不妊治療を考えている方はぜひご一読ください。
まずは、不妊治療を始めるタイミングやクリニック選びのポイントについてご紹介していきましょう。不妊治療を始めるかどうか迷っているときのご参考にしてください。
不妊治療は、結婚後すぐに始めても問題ありません。婦人科系の疾患は早く見つけて早く治療することで、その後の妊娠のしやすさにつながります。そのため、不妊検査だけでも早めに受けたほうがいいという考え方もあります。
一般的には「避妊せずに1年間セックスしても妊娠しない」というときに不妊治療を検討するご夫婦が多いようです。
ただし、女性の妊孕力(にんようりょく=妊娠する力)は年齢とともに低下します。20代前半の妊孕力を100としたとき、30代後半ではおよそ70に、40代前半では40未満にまで下がります。35歳以上の場合は1年を待たず、早めにクリニック受診を検討するのがいいでしょう。
不妊治療が受けられる医療機関は、大まかにいうと3種類に分けられます。
・一般婦人科
・産婦人科の不妊外来
・不妊専門クリニック
初めて不妊治療をするなら「不妊専門クリニック」がおすすめです。理由はタイミング法から体外受精まで、一貫して治療をおこなえるからです。
そのほかの2つは一般不妊治療(タイミング法と人工授精)までしか受けつけていないところが多く、一貫した治療には向きません。
ただし、不妊専門クリニックではお子様連れの受診をNGにしているところもあります。2人目3人目不妊でお悩みの方は、子どもがいても通いやすい産科併設の不妊外来がおすすめです。
基本的には生理中に受診しても問題ありません。不妊検査では、月経周期に合わせてさまざまな項目をチェックする必要があるからです。
生理中:血液検査
排卵日前:膣内エコー、頸管粘液のチェック
排卵後:プロゲステロンチェック
上に示したのはあるクリニックの一例です。月経周期に沿っていろいろなチェックが入ることが分かります。すべての検査が終了するまでの期間は、初診からおよそ1~2ヶ月後です。
ただし、クリニックによっては「生理中の受診は避けて」というところもあります。事前にホームページや予約時の電話で確認しておくといいでしょう。
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予約ができたら、次は受診の準備です。ここでは「初診時に用意しておいた方がいいもの」をご紹介します。
・健康保険証
・お薬手帳
・基礎体温表(あれば)
・他院での検査結果(あれば)
・問診表
・夫婦の婚姻関係を証明する書類
初めて受診するときの一般的な持ち物を上に示しました。
基礎体温表をつけている場合は持参しましょう。月経リズムを知る上での大きな助けになります。また、現在は待ち時間短縮のために「WEB問診表」を用意しているクリニックが多くなっているので、予約時にアナウンスされたらあらかじめ入力しておきましょう。
それと、もうひとつ必要なのが「夫婦の婚姻関係を証明する書類」です。2022年4月からの不妊治療保険適用化にともない、クリニックでの婚姻関係確認が義務づけられています。確認ができないと保険診療にならないので注意しましょう。
「夫婦の婚姻関係を証明する書類」として提出を求められるのは、住民票や戸籍謄本などです。婚姻の状況によって異なるので、詳しくは受診するクリニックで確認してください。
検査で膣内エコーをするときは、下着を脱ぐ必要があります。服装はゆったりとして着脱しやすいものを選びましょう。おすすめなのは、スカートやチュニックです。靴は脱ぎやすく履きやすいフラットシューズなどがいいでしょう。
逆にきつめのパンツやガードル、タイツ、編み上げブーツは着脱しづらいので受診には不向きです。オールインワンも避けた方がいいでしょう。
不妊治療は「絶対に夫婦で行かなければいけない」ということはありません。都合がつきにくいときは別々に来院してもいいでしょう。
ただ、不妊治療はどちらか片方だけの努力で進めていくものではありません。双方の協力なしにはできない検査、治療があります。そのことをお互いが理解するためにも、できれば初診はご夫婦で受けられるのがベストです。
初めての受診では、問診のほかに各種検査を受けることがほとんどです。それぞれ具体的に解説していきましょう。
不妊治療をおこなうにあたって、必要な情報を聞き取るのが問診です。とっさに聞かれても答えられないということがないように、あらかじめメモをしていくといいでしょう。
・月経周期
・最終の月経日
・初潮の時期
・セックスの頻度
・避妊せずに過ごした期間
・いままでの妊娠歴、流産歴、中絶の有無
・既往症やアレルギー
中には答えにくい質問もありますが、今後の治療に役立つ情報なのでできるだけ正確に答えましょう。
初診でおこなう検査としては、以下のようなものが代表的です。
・血液検査
・内診
・膣内エコー検査
血液検査では、ホルモンの分泌状況や貧血の有無を調べます。
内診や膣内エコー検査では、膣や子宮、卵巣の状況を観察します。このとき、婦人科病が見つかることもあります。
異変が見つかれば治療をし、妊娠しやすい状態に近づけます。検査と治療は並行しておこなわれることが多く、最初はタイミング法などの一般不妊治療からスタートしていきます。
最後に、多くのご夫婦が抱く「不妊治療をすれば妊娠できるの?」という疑問にお答えしていきましょう。
2017年のデータによると、ART(体外受精や顕微授精の総称)で出産できた方の割合は30歳でおよそ20%、40歳でおよそ10%となっています。
自己流の妊活より不妊治療をした方が妊娠率は高まりますが、実際に授かれるかどうかはやってみなければ分からないのが現状です。
特に年齢は妊娠率に大きく影響します。年齢が増すと妊娠率は低下し、代わりに流産率が上昇します。「30代後半になったら1日でも早く不妊治療を受けたほうがいい」といわれるのはこのためです。
「せっかく妊娠したのに流産してしまった…」「体外受精しているのになかなか成功しない…」
この悲しみは何にも代えがたいものです。医学の力でどうにか避ける方法はないのでしょうか。
近年、流産率を低下させる方法として注目されているのが「着床前診断」です。受精卵になんらかの染色体異常があると高確率で流産してしまうのですが、着床前診断ではこの染色体異常のある受精卵を見分けることができます。
染色体異常の少ない受精卵を選んで着床させることで、流産率を減らすことが可能なのです。
従来は日本産科婦人科学会の承認が得られなければ受けられませんでしたが、現在は民間で審査をせずに受けることができるようになりました。株式会社B&C Healthcareの着床前診断プログラムは、受精卵だけをアメリカ研究機関に輸送して検査する方法です。
「体外受精してもなかなか妊娠できない」「不妊治療をしたいけど、年齢的にもう手遅れかも…」というご夫婦にとっては、新たな可能性を秘めた検査といえるでしょう。
不妊治療に初めて行くのは緊張するものです。しかし、妊娠率は年月につれて次第に低下するため、早めに受診するメリットは大きいでしょう。
「年齢を重ねているのに治療しても…」と躊躇しているなら、着床前診断で受精できるかどうかを確認するのもひとつの手段です。ご夫婦で相談しながらよりよい選択肢を選んでいきましょう。