受精卵が女性の子宮とくっつくことを、着床といいます。医学的にはこの着床をもって「妊娠した」と判断するため、ある意味妊活のゴールともいえるでしょう。
着床したかどうかはどうやって知ることができるのでしょうか?また、着床すると女性の身体はどう変化していくのでしょうか?
今回は着床について知っておきたい基本のこと、着床すると現れる身体のサインについて解説します。妊活中のご夫婦はぜひ参考にしてみてください。
卵子と精子が出会うと受精卵が誕生します。ですが、受精卵が生まれるだけでは「妊娠が成立した」とはいえません。
妊娠したといえるのは、受精卵が子宮へ着床した瞬間。生まれた受精卵が卵管を旅して子宮までたどり着き、赤ちゃんのベッド=子宮内膜に潜り込んだときなのです。
受精から着床にいたるまでの間、身体の中では一体なにが起こっているのでしょうか?
卵子と精子は、卵管の端にある「卵管膨大部」という場所で出会います。
精子が卵子と結びつくことで、めでたく受精卵に。そのあとは細胞分裂を繰り返しながら、受精卵にとっては果てしなく長い卵管を数日かけて旅していきます。
成長した受精卵は胚となり、胚は子宮内膜にくっついて絨毛という組織によって結ばれます。これが「着床」です。
受精卵はそのすべてが着床するわけではありません。着床したということは、出産までの大きなハードルをひとつ飛び越えた状態ということになるのです。
受精卵は、生まれてからどのくらいで着床するのでしょうか?
受精卵が着床するのは、受精したタイミングからおよそ7~10日後です。
着床すると子宮内膜は胎盤へと呼ばれる組織へと成長し、プロゲステロンやエストロゲンを放出します。これらのホルモンにより、着床した頃から女性の身体にはさまざまな変化が現れるのです。
着床して現れる身体の変化は「妊娠初期症状」と呼ばれるもので、いわゆる着床のサインです。
ここでは代表的な妊娠初期症状についてご紹介します。妊娠したかも?と思いあたることがあったら、ぜひチェックしてみましょう。
着床すると分泌されるホルモンのひとつがリラキシンです。リラキシンは、出産にむけて骨盤をやわらかくする働きがあります。
骨盤がやわらかくなると周囲の関節に負荷がかかり、腰や脚の関節などの痛みにつながることがあるのです。
妊娠すると、お腹のあたりにチクチクとした痛みを感じることがあります。これは着床痛と呼ばれるものです。
着床痛は、人によってはツーンと刺すような痛みだったり、一瞬だけの軽い痛みだったり、数日続くズーンとした痛みだったりとさまざまです。初産婦よりも、2人目3人目を妊娠中の経産婦がより感じやすいといわれています。
着床すると、妊娠を継続するためにプロゲステロンというホルモンが増えます。このプロゲステロンによって、眠気やだるさ、倦怠感などの症状が現れます。
眠くなることで、集中力の低下を招いたりイライラしやすくなったりと、メンタルに影響することも。「普段は気にならないことが妙に気になる…」というときは、もしかしたら着床のサインかもしれません。
着床したあと、わずかに出血することがあります。これは胞胚が子宮内膜に潜り込んだときの刺激によるものです。
着床する時期と生理が来るタイミングはほぼ同じなので、着床出血を生理と勘違いしてしまうこともよくあります。
着床出血は生理と比べてずっと量が少ないので、ピンクや薄茶色のぼんやりした色であることが多いようです。出血期間も短く、およそ1~3日ほどで収まります。
妊娠すれば必ず着床出血が起こるというわけではありません。着床出血を経験するのは全体の約1/4といわれています。
着床するとエストロゲンが増えます。エストロゲンにはおりものの量を増やす働きがあり、質感も粘りのないサラッとしたものに変化します。
色は半透明~乳白色。着床出血で少量の血液が混じり、ピンクや薄茶色、明るい赤色に見えることもあります。
基礎体温表をつけているとよく分かるのですが、生理になるとガクッと体温が下がります。これはホルモンの変化で身体が低温期に入るためです。
しかし、着床している場合はプロゲステロンが放出され、高温期(低温期より0.3~0.5℃高い状態)が約17日間も維持されます。
人によっては37℃以上の微熱を示すことも。眠気やだるさなどの諸症状が重なり、風邪と間違われることも多いようです。
妊娠すると生理がストップします。妊娠したかも?と気づく代表的なサインです。
ただし、着床出血を生理と間違えてしまい、気づくのが遅くなるケースもあります。着床出血との違いを見分けるには、普段の生理の量や出血期間をよくチェックしておくことがポイントです。
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【医師監修】妊娠がいち早くわかる方法は? 気づくきっかけやタイミングをチェック
着床のサインが現れたとき、本当に妊娠しているかどうかどう確かめればいいのでしょうか。
着床をチェックする方法は、妊娠検査薬とクリニック受診の2つです。まずは妊娠検査薬でチェックし、陽性が出たらクリニックで確認してもらうといいでしょう。
ここでは、それぞれの検査を行うタイミングや方法について解説します。
妊娠検査薬は、ドラッグストアで数百円~2,000円前後で手に入ります。さまざまなメーカーから販売されていますが、基本的な使い方は同じです。
妊娠検査薬は、着床すると分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)に反応します。hCGは尿中に排泄されるため、キットの一部に尿をかけて妊娠の有無をチェックします。
検査できるタイミングは、生理開始予定日から1週間後です。もっと早く検査できる「早期妊娠検査薬」であれば、生理開始予定日に検査できます。
妊娠検査薬で陽性を示すラインが出たら、妊娠している可能性が高いといえます。
生理開始予定日のちょうど1週間後に妊娠検査薬で陽性が出たら、もう1週間待ってクリニックを受診しましょう。というのも、受診のタイミングが早すぎると心拍が確認できずに出直しになってしまうことがあるからです。
心拍が確認できるのは妊娠6週から。最終生理開始日を0週0日で数えるので、28日周期の女性なら生理開始予定日を2週間過ぎたあたりでクリニックを受診するといいでしょう。
ただし、出血量が多いときや痛みが強いときは要注意です。異常妊娠や病気の可能性があるので、我慢せずに早めに受診をしてください。
「何度もトライしているのに、なぜ着床のサインがないの?」と悩むご夫婦は多くいらっしゃいます。
原因のひとつとして考えられるのが「着床不全」です。子宮が着床しにくい形だったり、受精卵そのものに何らかの異常があったりすると、うまく着床することができません。
着床不全でもっとも多いとされる原因が「受精卵の染色体異常」です。染色体異常は若いご夫婦にもみられますが、卵子や精子が老化するほどその割合は増していきます。
染色体異常でなかなか妊娠しないときは、一体どうすればいいのでしょうか?
染色体異常のある受精卵を「治す」ことは現代医学でもできないのですが、「見分ける」ことなら可能です。染色体異常のない卵子を選ぶことで、着床する可能性が高まります。
見分ける手段とは「着床前診断」です。
着床前診断とは、体外受精で得られた受精卵の一部を採取し、染色体や遺伝子に異常がないか調べる検査です。異常のない受精卵を子宮に戻すことで、着床率の改善に効果があることが分かっています。
着床前診断は日本産科婦人科学会によって厳しく管理されており、受けるには一定の条件を満たさなければなりませんでした。しかし、最近は検査の規制がないアメリカへ受精卵を凍結輸送する着床前診断も登場しています。
着床のしくみと身体のサインについてご紹介しました。サインの現れ方は人によってさまざまですが、「いつもと違うかも?」と感じるときは注意深く様子を見て、妊娠の可能性が高いときは検査薬やクリニック受診を検討しましょう。
なかなか着床のサインが出ない場合は、クリニックで一度検査を受けてみましょう。受精卵の染色体異常が原因であっても、手立てがないわけではありません。
株式会社B&C Healthcareでは着床前診断について詳しい情報を提供しています。興味のある方は、一度資料を取り寄せてみてはいかがでしょうか。