「インプランテーションディップ」という言葉を聞いたことがありますか?
インプランテーションディップは欧米では着床のサインとして知られています。SNSなどを通じ、最近では日本でも話題になっているようです。
インプランテーションディップとはどのような現象なのでしょうか?そして、インプランテーションディップが起きたときに妊娠している確率はどのくらいなのでしょうか。今回はインプランテーションディップの詳細についてお伝えしていきます。
高温期に入ったあと、一時的に基礎体温が下がる現象をインプランテーションディップと呼びます。
インプランテーションディップという言葉は「implantaion(着床)」と「dip(沈む)」を組み合わせたもので、欧米では妊娠の兆候として語られることがあるようです。
なぜインプランテーションディップが起こるのか、その原因は解明されていません。医学的な根拠も乏しいとされており、ジンクスのようなものと認識している人も少なくないようです。
インプランテーションディップでは、高温期の体温と比べて0.17℃以上下がるといわれています。体温が下がる回数は高温期の間で1回です。
また、下がる日数は1日だけで、翌日からは高温期の体温に戻ります。2~3日続けて下がるようであれば、インプランテーションディップではないと判断されることが多いようです。
インプランテーションディップと同じ時期に次のような症状が起こることもあります。
・着床出血(おりものに少量の血液が混じる)
・チクチクとした下腹部痛
・体がだるい
これらは妊娠超初期にみられる身体の変化で、もし妊娠している場合はこうした兆候が現れることがあります。
ただし、妊娠していなくてもちょっとした不調で痛みやだるさが生じることはよくあるので、参考程度に考えておくのがよいでしょう。
インプランテーションディップが起きたときの妊娠率について、医学的に根拠のあるデータは報告されていません。
インプランテーションディップと妊娠の関連についておこなわれたある調査では、妊娠している人の約23%がインプランテーションディップを体験していましたが、約75%にはみられませんでした。また、妊娠していない人のうち約11%がインプランテーションディップのような体温の落ち込みを体験していることも分かりました。
このことから、妊娠とインプランテーションディップの関連性はあまり高くないということが分かります。
インプランテーションディップは高温期に入って7~8日目に起こるといわれています。そのころ、お腹の中では何が起こっているのでしょうか。
排卵が起こるのは高温期に入る直前の日です。この前後に性交渉をすると、精子が体内に侵入します。精子の寿命は3日ほど。この間にタイミングよく卵子と精子が出会うことができれば、受精が成立します。
卵管で誕生した受精卵は、子宮を目指してゆっくりと卵管を通過します。この間に受精卵の細胞は1個から2個、2個から4個と増え続け、日を追うにつれて受精卵の内部が複雑になっていきます。
受精から5日目くらいになると、受精卵は胚盤胞(着床できる状態)へと成長します。卵管を抜けて子宮へと到達すれば、着床はもう間近。胚盤胞を覆う透明帯が薄くなり、一部が割れて胚盤胞が飛び出します。
透明帯の外に飛び出した胚盤胞は子宮内膜にくっつき、組織の奥へと潜ります。受精からおよそ12日が経過するころに着床が完了。これで妊娠が成立します。
インプランテーションディップが起こるタイミングは、受精からおよそ7~8日の間です。ちょうど胚盤胞が子宮内膜に侵入し、着床がスタートするころと一致します。
着床開始から10日ほど経つと、妊娠検査薬で妊娠を確認できるようになります。
ただしこのタイミングだと正確な結果が出ないことがあるので、着床から2週間後(生理予定日から1週間後)までしっかり待って検査するのがベストです。
高温期に体温が下がったときは、ほかの原因も考えられます。インプランテーションディップと混同しやすいものについてピックアップしました。
基礎体温はちょっとした環境の変化で下がることがあります。
「いつもより部屋が冷え込んでいた」「計測の途中に口を開けてしまった」など、計測の誤差で体温が下がっている可能性もあるのです。また、ストレスや寝不足によって体温が下がることもあります。
ホルモンバランスが崩れると、基礎体温が安定しないことがあります。
高温期に体温が下がる場合、黄体機能不全が疑われます。黄体ホルモンの分泌が低下すると、本来10~14日続く高温期が9日以下になったり、高温期の途中で体温が下がったりするのです。これをインプランテーションディップと見間違えてしまうことがあります。
黄体機能不全をそのままにすると妊娠しにくくなるおそれがあるので、高温期が安定しないときは早めにクリニックを受診しましょう。
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早めに治療をスタートすれば、妊娠のタイムリミットを有効活用することにもつながります。できればご夫婦一緒に検査を受けてみましょう。
「すでに不妊治療を開始していて、体外受精も何度も試しているのに妊娠しない」という人もいらっしゃるでしょう。そうしたケースでは着床前診断を検討してみるのもひとつの方法です。
妊娠しない原因として考えられるのが受精卵の染色体異常ですが、染色体異常は35歳以上になると顕著に増加します。染色体異常のある受精卵は妊娠までこぎつけることなく、ほとんどが成長を止めてしまうのです。
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日本国内で、着床前診断を受けるには一定の条件を満たす必要がありますが、近年では海外の検査機関で検査を行う着床前診断プログラムも登場しています。海外への渡航も必要ありません。着床前診断は、昔よりもはるかに身近なものになっています。
高温期に体温が下がると「インプランテーションディップ?」とつい期待してしまいますが、実際には妊娠していなかったというケースも多く、明確な医学的根拠はありません。
また、黄体機能不全が隠れている可能性もあるので、基礎体温が不安定な場合は早めにクリニックを受診しましょう。
体外受精を繰り返しているのに妊娠しない場合は、着床前診断という手段もあります。着床前診断については株式会社B&C Healthcareで詳しい資料を提供しています。興味のある方は一度取り寄せてみてはいかがでしょうか。