妊活や不妊治療をするにあたり、「卵子はどのくらい残っているんだろう」と気になったことはありませんか?その疑問を解消するひとつの方法として「AMH検査」があります。
AMH検査は「妊娠する可能性の目安になる」と誤解されがちなのですが、実際にはややニュアンスが異なります。AMH検査を本当の意味で妊活・不妊治療に役立てるには、きちんとした理解が必要です。
今回はAMH検査で分かること、AMH値の目安、数値が低いときの対策などについて解説します。AMH検査に興味があり、受けるかどうか悩んでいる方はぜひご一読ください。
AMH(Anti-Mullerian Hormone:アンチミューラリアホルモン)とは、これから発育していく卵胞から分泌されるホルモンのことです。
「卵巣予備機能検査」と呼ばれることもあるのですが、AMH検査の結果からどんなことが分かるのでしょうか。
AMH検査で分かるのは「卵子の在庫数」です。AMH値は卵巣内の卵子数に比例するといわれるため、体内にどのくらい卵子が残っているかを知る目安になります。
AMH値が高ければ、「卵巣内の卵子がたくさん残っている」ということを意味します。ただし、AMH値が高すぎるときは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)という病気の可能性もあるので注意が必要です。
AMH値が低ければ、「卵巣内の卵子が残り少ない」ということを意味します。排卵できる期間が限られているため、不妊治療現場では早めのステップアップをすすめられることもあります。
女の子の赤ちゃんの卵巣には、約200万個もの卵子があります。卵子は新しく造られることがないため、年齢とともに減少する一方です。
初経がはじまるころには、卵子は約30万個に減っています。その後は毎月ひとつだけ卵子が排出されますが、準備のために毎月約1000個の卵子が失われ、30代になった頃には、約2~3万個にまで減少するといわれています。
ちなみに、卵子が1000個以下になると閉経を迎えます。AMH検査で残り時間の目安を知ることは、不妊治療のスケジュールを立てる上で重要です。
AMH値の年齢別平均値は以下のとおりです。年齢が進むにつれ、AMH値が徐々に低下していることが分かります。
女性年齢 | 平均値(mg/dl) |
~27歳 | 4.69 |
30歳 | 4.02 |
35歳 | 2.62 |
40歳 | 1.47 |
(参照元:ベックマン・コールター株式会社:「アクセス AMH(IVD)」測 定費の年齢別分布図)
ただしAMH値は同年齢でもバラつきが大きいので、平均値より低いからといって心配しすぎることはありません。
一般的に、2.0mg/dl以上であれば妊娠に影響のない値だとされています。2.0mg/dl以下であれば早めに不妊治療を開始しましょう。
6.0mg/ml以上の場合、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の可能性があります。これは不妊症の原因のひとつで、排卵に障害を起こします。
もし多嚢胞性卵巣症候群と診断されても、体重管理や排卵誘発剤の内服によって改善することが可能です。担当医師とよく相談して、適切な治療を進めていきましょう。
AMH値が低いと妊娠率も下がると思われがちなのですが、実際のところ卵子の在庫数は妊娠率にそれほど影響しないことが分かっています。
妊娠において重要なのは「卵子の質」です。質のよい卵子さえあれば、AMH値が低くても妊娠することは十分に可能なのです。
逆にいえば、AMH値が高くても安心はできません。卵子の質が悪ければ、いくら卵子が豊富でも妊娠は難しくなります。
卵子の質はAMH検査では分かりませんが、年齢が進むにつれて徐々に低下していくのが通常です。35歳を過ぎると妊娠率にも影響が現れるので、AMH値にかかわらず早めに不妊治療を開始しましょう。
AMH検査を受けるには、どのような流れで申し込めばよいのでしょうか。ここではAMH検査を受けるための具体的な方法・費用などについて解説します。
AMH検査は、全国にある多くの不妊専門クリニックで受けることができます。すでに不妊治療をスタートしている方は、かかりつけのクリニックでAMH検査を受けられるかどうか確認してみましょう。
また、最近では郵送で検査できるAMH検査キットも登場しているようです。忙しくて病院に通う暇がないという方は、インターネットで調べてみてもよいでしょう。
AMH検査は血液を採取するだけなので、身体的な負担は大きくありません。
また、AMH検査は月経周期に影響を受けず、どの時期でもほぼ一定です。月経周期を気にする必要はないため、自分のスケジュールに合わせて申し込んでみましょう。
AMH検査の費用はクリニックによって異なりますが、目安として5千円~1万円ほどです。
また、一部のAMH検査は保険適用されることがあります。調整卵巣刺激療法の治療方針を決めるためにおこなう場合は、半年に1回の条件で保険適用が可能です。
ただし検査方法による違いもあるため、詳しくはかかりつけの医療機関に相談してみましょう。
結論からいうと、AMH値を上げる方法はありません。生まれ持った卵子は減る一方であり、それを食い止める方法は現段階では確立されていないのです。
<AMH値が低いと分かった場合>
・早めに妊活・不妊治療をスタートする
・不妊治療の一般治療中であれば早めに切り上げて体外受精へのステップアップを検討する
といった対策が有効です。
また、卵子の質は妊娠率に影響するので、少しでも維持できるように生活習慣を工夫しましょう。
妊娠では卵子の数よりも質が重要ですが、次のような生活習慣は卵子の老化を早めてしまいます。
・喫煙
・睡眠不足
・ストレス過多
・食生活の乱れ
・運動不足
このような生活習慣はできるだけ避けて、卵子の質を維持するように心がけましょう。
なかでも喫煙は著しく卵子の質を低下させてしまいます。妊娠したいと思ったらすぐに禁煙をはじめるのがベストです。
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【医師監修】「卵子も歳をとる」って本当?卵子の年齢を検査する方法はある?
AMH検査だけで卵子の質を知ることはできません。ですが、着床前診断をおこなえば「妊娠に結びつきやすい受精卵」を見分けることが可能です。
着床前診断とは、体外受精によって得られた受精卵の一部を採取し、染色体や遺伝子に異常がないか調べる検査のことです。
問題がないと分かった受精卵だけを子宮に戻すため、着床率の向上や流産率の低下、染色体異常などが原因で起こる先天性疾患の低下が期待できます。
とくに「体外受精がなかなか成功しない」「妊娠はするけれど流産を繰り返している」というご夫婦は、着床前診断について知っておくとよいでしょう。
AMH検査で分かるのは「卵子の在庫数」です。不妊治療の残り期間を知る目安になるため、不妊治療のステップアップを検討するときに役立ちます。
また、卵子の質を調べる検査はありませんが、受精卵の質を調べる検査としては着床前診断があります。
株式会社B&C Healthcareでは、受精卵のDNA情報だけを海外輸送する着床前診断プログラムを提供しています。興味のあるご夫婦は、一度資料を取り寄せてみてはいかがでしょうか。