晩婚化が進む現在では「不妊治療」や、産み分けのための「着床前診断」を受診する方が増えています。そのプロセスの一環で、受精卵を一時的に凍結することがあります。ですが「妊娠率は変わるの?」「受精卵にマイナスの影響はないのか?」と疑問や不安に感じる方もいるでしょう。
そこで本記事では「受精卵の凍結・融解」をテーマに、概要やメリット・デメリット、費用や期間を解説します。治療を検討される方は、知っておくと良い内容です。
なぜ受精卵を凍らせる必要があるのでしょうか?概要や理由、方法などを見ていきましょう。
受精卵の凍結とは「受精卵を冷凍保存すること」。そして融解は「冷凍した受精卵を解凍し、子宮内へ移植できる状態にすること」を指します。「なぜ凍らせる必要があるのか?」の理由は、体外受精のプロセスを知ると分かります。
体外受精(または顕微授精)の流れを簡単にまとめると、
①排卵誘発剤などを使用し、母体から複数の卵子を採取
②パートナーから精子を採取
③卵子と精子を受精させる(顕微授精では、直接卵子の中へ精子を注入)
④受精卵を数日間培養する
⑤無事に培養できた受精卵1つを子宮内へ注入(胚移植)
5つのステップでおこないます。
①で複数の卵子を採取し、④で約2~6日間培養します。培養する日数は、受精卵内の細胞の育ち具合や本人の希望、医師の判断などにより決めます。ですが、無事に移植が可能な状態に育つとは限りません。無事に培養が進み、移植が可能だったとしても「着床しやすい時期の子宮環境」ではない可能性もあるのです。
そのため、無事に受精できた受精卵をいったん冷凍保存し、次回の周期以降で子宮内が妊娠に適したタイミングで移植する方法が取られています。
受精卵を培養後、ただちに移植することを「新鮮胚移植」、いったん受精卵を凍らせて、次の周期以降に移植することを「凍結胚移植」と言います。
冷凍保存させる理由は以下の2つです。
①妊娠が可能な受精卵を全て保存でき、次の周期に使用するため
②最適なタイミングで受精卵を子宮内に戻すため
妊婦の負担を減らして効率化を図るためと、ベストな時期に移植することで妊娠率を高めるためにおこなっています。
具体的にはどのような方法なのでしょうか?それぞれの方法を見ていきましょう。
【凍結の方法】
医療機関にもよりますが、国内の多くは「超急速ガラス化法」と呼ばれる手法で凍らせています。具体的には以下のステップです。
①受精卵を刺激から守る保存液内へ入れる
②さらに、ガラス化液に受精卵を入れて水分を脱水させる
③専用の容器の上に載せ、液体窒素(-196℃)の中で冷却
④移植日まで保存
刺激を与えることはなく、長期的に冷凍保存できます。
続いて、融解の方法も見ていきましょう。
【融解の方法】
主な流れは以下の通りです。
①37℃の融解液の中に受精卵を入れる
②別の溶液へ入れ、受精卵を満たしているガラス化液を浸透圧で水分と入れ替える
③受精卵を専用の保管庫で保管(または培養)する
受精卵の生存率は約9割以上。高い確率で移植が可能な状態に戻るため、安全性の高い方法です。
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【医師監修】受精卵のグレードと妊娠率の関係は?着床率を高める手段を解説
一番気になるのは、妊娠への影響でしょう。治療前に知っておきたい、妊娠への影響やメリット・デメリットを解説します。
結論として、凍結・融解による妊娠へのマイナスの影響は少なく安全だと言えます。
先述した通り、凍結の手法である「超急速ガラス化法」は、受精卵へのダメージがほぼなく、受精卵の生存率は約9割以上です。また、凍結した受精卵から産まれた赤ちゃんと、そうでない赤ちゃんを比較した場合、先天性の異常発症などの確率は同等と言われています。
よってマイナスの影響は少なく、通常妊娠と変わらない確率だと言えます。むしろ、受精卵を選定&着床が可能な時期で移植をおこなえるため、妊娠率を高める方法でもあるのです。
ただし、長い期間冷凍する場合はデータが少ないため影響は不明です。「100%大丈夫」とは言いきれないため、最終的には自己責任で判断しましょう。
凍結による、さまざまな利点があります。
具体的なメリットを、以下にまとめました。
排卵誘発剤などで卵巣刺激すると、OHSSが発症するケースがあります。排卵誘発時に使うHCG注射が原因で、約7日間は体へ影響があります。そんな中で妊娠すると、さらに多量のHCGが体内で生産されるため、OHSSの発症や重症化するリスクが高まるのです。そのため、凍結により採卵と移植のタイミングをずらすことで発症を防げます。
妊娠が可能な子宮の時期(着床の窓)は限られています。凍結することで、子宮環境が整った時期に移植でき、妊娠の可能性を高められるのです。
採卵には、妊婦の体や時間への負担があります。そのため、1回の採卵時に複数の受精卵を凍結保存することで負担軽減につながります。
移植する受精卵を1つに限定できるため、多胎妊娠を防ぐことにつながります。
認識しておきたい懸念点もあります。デメリットを2つにまとめました。
凍結・解凍による受精卵や子どもへの影響はほぼないと言われています。ですが「100%大丈夫」と断言できません。低確率ですが、凍結・融解した後に変異することもあります。また障がいなどの発生率は通常妊娠と変わりませんが、次世代など長期的な影響は不明と言われています。
保管場所が天災などの予測不可能な災害により、ダメージを受けたり全ての受精卵を失ったりするリスクがあります。
受精卵の保存期間はどのくらい可能なのでしょうか?また、治療を検討されている方は費用も気になるところ。
結論として、医療機関にもよりますが保存期間の多くは約1年間です。もし延長したい場合は、保存期間内に手続きをすれば延長できるケースがほとんどです。延長や廃棄の手続きなどの詳細は、各医療機関に問い合わせましょう。
受精卵の凍結・融解の各費用は、医療機関のメニューによりさまざま。1つの受精卵につき約30,000円~70,000円が多いです。(保険適用外)また、保管の管理費や容器代が加算されるケースも。詳細は医療機関に確認しましょう。
本記事では「受精卵の凍結・融解」をテーマに、概要やメリット・デメリット、費用や期間などを解説しました。
受精卵を凍結・融解することで、妊娠へのマイナスな影響はありません。むしろ、コストを削減できたり、ベストタイミングで移植をおこなえたりするといったメリットがあります。
とはいえ、妊娠中に不安はつきものです。疑問や懸念点がある場合、かかりつけの医師やパートナーとよく相談しましょう。また、あらかじめ相談できる体制や治療手段が整っている医療機関を選び、治療をおこなうと安心です。
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