不妊治療中は、できるだけ早く妊娠したいと考える人も多いでしょう。妊娠しやすい体づくりには「バランスの良い食事」が大切です。
今回の記事では、栄養面から妊活をサポートする方法を解説していきます。
食生活で妊娠しやすい体に導くためにはどうすればよいのでしょうか。押さえておきたい3つのポイントについて解説します。
妊娠しやすい体の条件のひとつとして「血行が良いこと」が挙げられます。
たとえば卵胞は、脳下垂体前葉から放出される卵胞刺激ホルモン(FSH)の働きによって育ちます。このとき血行が悪いとホルモンをうまく運ぶことができません。結果として卵胞の成長を妨げてしまうのです。
血行が悪いと冷えにつながり、それがさらに血行不良を呼ぶという悪循環に陥ってしまいます。妊娠しやすい体になるには血行を促して、血液循環の良い体をつくることが重要です。
妊娠にはホルモンが重要です。そして、ホルモンを作る材料は食べ物に由来しています。
性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンを生成するには、肉や卵に含まれるコレステロールが必要です。
ホルモンバランスを保つには、たんぱく質や脂質、ビタミン、ミネラルの補給も欠かせません。1日3食バランスよく食べ、欠食は避けるようにしましょう。
太りすぎや痩せすぎは、妊娠のしやすさに影響します。太りすぎている場合は卵子数の減少やホルモンバランスの乱れ、痩せすぎている場合は月経不順や無排卵によって不妊をまねくリスクがあります。
妊娠しやすいBMI(Body Mass Index)の目安は、19~22.9 mg/m2の範囲です。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
上の計算式を使って自分のBMIをチェックしてみましょう。範囲に当てはまらないときは、食生活を見直す必要があるかもしれません。
不妊治療中に取り入れるべき栄養素と食べ物についてご紹介します。ご自身の食生活で不足していると思うものがあれば、積極的に取り入れてみましょう。
たんぱく質は体をつくる基本となるものです。しっかり摂っているつもりでも、朝食や忙しい日のランチでは意外と抜けてしまうこともあるのではないでしょうか。ゆで卵や納豆など手軽に摂れる食材もあるので、足りないと感じたら意識して食べてください。
一食あたりのたんぱく質は、握りこぶし一つ分くらいの量が目安です。豆腐や大豆製品などの植物性たんぱく質はヘルシーですが、肉や魚、卵などの動物性たんぱく質も鉄分・ビタミンAなどの栄養に優れています。どちらか片方に偏ることなく、バランスよく摂るようにすると良いです。
オメガ3系脂肪酸には血流改善効果があります。精子運動率を向上させるというデータもあるため、女性だけではなく男性にも積極的に摂ってほしい栄養素です。
オメガ3系脂肪酸を多く含むのは、サバ・サンマ・イワシなどの青魚です。魚を食べるのが苦手な場合は、スーパーでも売っている亜麻仁油・えごま油を利用してもよいでしょう。
亜麻仁油・えごま油は加熱には向いていないので、生のまま利用します。クセがないのでサラダや和え物にかけたり、ヨーグルトに混ぜたりして1日小さじ1杯を摂るとよいでしょう。
ストレスや睡眠不足が重なると、体内に活性酸素という物質が増えます。活性酸素は卵子の質を低下させる原因の一つです。この活性酸素を除去するために、ビタミンA・ビタミンE・ビタミンCが役立ちます。
ビタミンAはレバーや卵黄・緑黄色野菜に、ビタミンEはアーモンドやヘーゼルナッツなどのナッツ類・かぼちゃ・ほうれん草・大豆に多く含まれます。ビタミンA、Eは油に溶けやすいビタミンのため、油を使う調理法でより吸収力が上がります。
ビタミンCは野菜全般、キウイやいちごなどの果物に豊富です。水溶性のビタミンCは茹でたり水にさらしたりすると流出しやすいので、汁ごと飲めるスープにするのがおすすめです。
ビタミンDには、受精卵が着床して胎盤が形成されることを助ける働きがあります。
イギリスのある研究によると、体外受精においてビタミンDが不足している女性の出生率は24.3%、十分に足りている女性の出生率は34.4%でした。また、子宮内膜症や多嚢胞卵巣症候群などの不妊原因をもつ人は、血中ビタミンD濃度が低いことも指摘されています。
このことからも、ビタミンDはしっかり補給しておくのがベストといえるでしょう。
ビタミンDは、干し椎茸やきくらげ、舞茸などのきのこ類に多く含まれます。ビタミンDは油に溶けやすい性質なので、炒め物にしたり脂身のある肉と一緒に調理したりするのがおすすめです。
葉酸は赤ちゃんの神経管を正常に発達させるための栄養素です。神経管は妊娠初期に形成されるので、妊娠する1ヶ月前からコツコツと摂取する必要があります。
葉酸はほうれん草・モロヘイヤ・ブロッコリー・レバー・枝豆などに多く含まれます。食事から必要な葉酸をすべて摂取しようとするとかなりの量が必要になるため、食事と併せて市販のサプリメントを活用することも手です。
サプリメントで葉酸を摂りすぎると亜鉛の吸収を妨げてしまうことがあります。1日の目安量をきちんと守り、過剰にならないように注意しましょう。
鉄分は貧血予防のためにも摂取したい栄養素です。貧血だと血液の循環が滞り、妊娠に必要なホルモンがうまく届けられなくなります。
月経周期を滞りなくするためにも必要な栄養素なので、十分に補給しましょう。
鉄分を多く含む食品は、レバー・赤身肉・かつおなどの赤身魚・あさりなどの貝類です。
小松菜・ほうれん草・枝豆などの植物性食品にも含まれますが、動物性食品と比べて吸収率が悪くなります。ビタミンCやクエン酸を含む食品と一緒に食べると吸収がよくなるので、味つけにレモンや梅肉を使ってもよいでしょう。
不妊治療中に積極的に取り入れたい栄養素について解説してきましたが、妊活中に注意したい食品もあります。ここでは、注意が必要なアルコールとカフェインについて解説します。
デンマークの研究によると、週に7杯以上のお酒を飲む女性は飲まない女性と比べて約2倍の不妊リスクがあることが分かりました。
また、妊娠中の過剰なアルコール摂取は「胎児性アルコール・スペクトラム障害」を引き起こすおそれがあります。特徴的な顔貌や小頭症、知的障害などを特徴とし、現在治療法はありません。
不妊はもちろん、障害を避けるためにもアルコールの飲みすぎには注意しましょう。
カフェインは血管を収縮させる働きがあり、体を冷やしてしまいます。カフェインの多い飲み物を1日に何杯も飲むことは好ましくありません。
飲み物に含まれるカフェイン量(1杯あたり)を示しました。
・ドリップコーヒー…120mg(1杯)
・インスタントコーヒー…110mg(1杯)
・エナジードリンク…100mg(1缶)
・紅茶…60mg(1杯)
・ペットボトルの緑茶…50mg(500ml)
コーヒーやエナジードリンクはとくにカフェインが多いので、飲みすぎに注意しましょう。
栄養面を整えるのは、不妊治療をサポートする上で大切です。しかし、十分に気をつけていても妊娠しないということもあるでしょう。そのようなときはどうしたらよいのでしょうか。
きちんと栄養面に気をつけ、適度な運動をし、不妊治療で頻繁に通院しているとなると、時には疲れが出ることもあるでしょう。
食事はいつも気をつけていなければならないわけではありません。たまに出来ない日があっても構いません。「疲れたな」と感じたときは手を抜いて、好きなものを食べて、気持ちを開放してあげる日をつくってください。
ストレスを軽くして過ごしやすくすることも、不妊治療ではとても大切なことです。
年齢が35歳を過ぎてくると、卵子の老化による影響が大きくなります。栄養面に気をつけたとしても、必ず妊娠できるとは限りません。老化した卵子は精子とうまく結びつくことができず、まれに妊娠したとしても初期のうちに流産することもあります。
そんな時は「着床前診断」で染色体異常を見分ける検査をすることも一つの手段です。
着床前診断は、体外受精で得た受精卵の染色体を詳しく調べる検査です。染色体異常のない受精卵を子宮に戻すことで、妊娠率の向上や流産率の低下が期待できます。
食事をはじめ生活のリズムを整えることは大切ですが、それだけでは乗り越えられない壁もあります。着床前診断について基本的な知識を身につけておくことは、不妊治療を進める上で大きな転換となるかもしれません。
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妊娠しやすい体になるポイントは、適正体重を目指すこと、体を温めて血の巡りをよくすること、ホルモンバランスを整えることの3つです。ご紹介した中でご自身に不足していると思う栄養素があったら、日常の食生活に取り入れてみましょう。
不妊治療を続ける上で年齢が気になるときは、着床前診断を検討するのもひとつの方法です。着床前診断の詳しい資料は株式会社B&C Healthcarの公式ホームページよりご請求できます。今後の方針を決める材料として、活用してみてはいかがでしょうか。