株式会社B&C Healthcare 受精卵の染色体・遺伝子検査事業

管理医療機器販売企業
(東京都港区みなと保健所届出)
B&C Healthcare

医師監修コラム

HOME  >  医師監修コラム  >  【医師監修】不妊症は遺伝する?考えられる原因・検査方法・対策について解説

【医師監修】不妊症は遺伝する?考えられる原因・検査方法・対策について解説

2023.11.22

不妊の原因はさまざまですが、そのうちの一部は遺伝に強く関係することがあります。

 

不妊に関わる遺伝要因にはどのようなものがあるのでしょうか。また、遺伝子検査を受ける必要はあるのでしょうか。

 

この記事では妊活や不妊治療を控えているご夫婦に向けて、不妊と遺伝の関連性についてお伝えしていきます。

 

不妊は遺伝するのか

親の不妊が子どもに遺伝することはあります。まずは男女それぞれの不妊と遺伝の関連性について見ていきましょう。

 

男性不妊と遺伝

男性の不妊では、しばしば遺伝の関与が見つかるケースがあります。

 

たとえば男性のY染色体に欠失があると無精子症や乏精子症を引き起こして不妊につながりますが、この欠失はY染色体の連鎖、つまり父親から息子へと遺伝します。

 

また、染色体転座を保有する男性では、不妊や流産が起こりやすくなることがあります。転座は子どもに引き継がれることもあれば、そうでない場合もあります。

 

女性不妊と遺伝

女性も染色体転座の保因者となり得るため、不妊や習慣性流産の原因になることがあります。男性同様、女性の転座も子どもに引き継がれることがあり、不妊が遺伝する可能性はゼロではありません。

 

また、糖尿病や婦人科系疾患へのなりやすさ、肥満などの体質などが遺伝して不妊につながるケースもあります。これらの体質は治療や生活習慣でコントロールできるので必ずしも不妊になるとは限りませんが、親族内で不妊の割合がやや高くなる可能性はあるでしょう。

 

不妊に関連する遺伝子の異常とは

不妊に関係する遺伝子や染色体にはどのようなものがあるのでしょうか。突発的な遺伝子変異も含め、代表的なものをまとめてみました。

 

クラインフェルター症候群

クラインフェルター症候群とは、男性がX染色体を1本余分に保有することで生じる遺伝子疾患です。XXY症候群と呼ばれることもあり、遺伝的な男性不妊の中ではもっとも多くみられます。

 

クラインフェルター症候群では精巣からテストステロンが十分に分泌されないため、うまく精子を作ることができません。そのためクラインフェルター症候群である男性のほとんどが不妊となります。健康上は大きな問題がないため見過ごされやすく、男性不妊をきっかけに判明することもよくあります。

 

クラインフェルター症候群は遺伝子疾患のひとつですが、その発生は偶発的であることがほとんどで、親から子どもに引き継がれることはほぼありません。

 

ターナー症候群

ターナー症候群は、女性がX染色体を1本しか保有しないことで生じる遺伝疾患です。X染色体モノソミーとも呼ばれ、女性不妊の原因のひとつになります。

 

ターナー症候群の女性の多くは卵巣機能が低下しており、ホルモン療法をしなければ月経が正常に起こりません。そのため約99%が不妊とされてますが、ごく一部の方は正常な卵巣機能を有しており、妊娠や出産に至るケースもあるようです。

 

ターナー症候群は偶発的に起こる遺伝子異常で、子どもに遺伝することはほとんどありません。しかし、X染色体の部分的な欠失によるターナー症候群は親から子へ遺伝する可能性があります。

 

Y染色体微小欠失

Y染色体欠失は、Y染色体上のAZF領域に欠失を認める遺伝性疾患です。Y染色体上のAZF領域は精子の製造に大きく関与しているため、無精子症などの男性不妊につながります。

 

中でも、AZFa欠失やAZFb欠失、AZFb+c欠失、Y染色体長腕欠失などの場合、精巣内精子採取術(TESE)を用いても精子を回収することができません。

 

精子を回収して出産に至った場合、産まれた子どもが男の子であれば、ほぼ確実にY染色体の欠失を引き継ぎます。

 

相互転座

相互転座は、異なる2本の染色体で切断が起こり、それぞれの断片が入れ替わって結合することで起こります。

 

相互転座は遺伝子の過不足がないので、保因者に見た目や性質上の異常はありません。しかし、生殖の段階では遺伝子の不均衡が起こりやすく、不妊や流産の原因となります。

 

ご夫婦のいずれか片方に相互転座がある場合、1/4は正常型の子ども、1/4は相互転座を保有する子ども、1/2は流産となります。

 

ロバートソン型転座

染色体は動原体という部分を境にして、短い部分(短腕)と長い部分(長腕)に分かれます。第13・14・15・21・22染色体は、動原体が染色体の末端部にあるのが特徴で、短腕が非常に短くなっています。

 

ロバートソン型転座は、これらの染色体の動原体付近で切断が起こって短腕が消失し、長腕同士が結合したものです。

 

消失した短腕は遺伝情報をもたないので、遺伝子の過不足は起こりません。しかし生殖の段階では遺伝子の過不足が起こりやすく、不妊や流産につながってしまいます。

 

遺伝子検査で何が分かる?

 

不育症や不妊症の場合、遺伝子的な原因を明らかにするために検査を実施することがあります。不妊に関連する遺伝子や染色体を調べる検査としては、次のようなものがあります。

 

・夫婦染色体検査(Gバンド法)

夫婦それぞれから採取した細胞を培養し、ギムザ染色によって現れる縞模様のバンドを評価する方法です。ご夫婦が保有する染色体の数的異常や構造異常、転座の有無について知ることができます。

 

Gバンド法では、微小な異常やモザイク(異常な細胞と正常な細胞が混在している)の検出は難しいとされており、微小な異常についてはFISH法などの検査法が用いられることがあります。

 

・Y染色体微小欠失(AZF)検査

男性のY染色体微小欠失について調べる検査です。造精に関わるY染色体のAZF領域に欠失がないかどうかを調べます。

 

AZFaやAZFbなどに欠失を認める場合、精巣内精子採取術でも精子を回収することができません。その一方で、AZFcの欠失は精子を回収できる可能性があります。

 

Y染色体のAF領域を検査することで精巣内精子採取術が可能かどうかが分かるため、余計な治療を省く目的で検査を実施することがあります。

 

遺伝子検査の費用

遺伝子や染色体の検査にはいくつか種類があり、費用もクリニックごとに異なります。

 

Gバンド法を自費で行った場合、費用の目安は3~7万円程度です。保険適用となる場合、3割負担で数千円程度となることもあります。

 

自治体によっては不育症の検査に対して助成金を交付しているため、検査を受ける際はあらかじめ自治体ホームページを確認しましょう。

 

遺伝子検査を受ける前に

遺伝子や染色体を検査すると、知りたくなかった情報が明らかになることも想定されます。

 

「やっぱり受けなければよかった」と後悔することにならないよう、検査前後で遺伝カウンセリングを受け、検査内容やメリット・デメリットなどについて十分な知識を身につけましょう。

 

また、検査で異変が見つかっても、染色体や遺伝子そのものを治療することはできません。転座があっても最終的には60~80%が子どもを持つことができるというデータもあるので、検査が必要なのかどうか、ご夫婦でよく検討してみましょう。

 

遺伝による不妊の対処法は?

遺伝による不妊が疑われる場合、妊娠や出産に至るにはどうしたらよいのでしょうか。対処法についてまとめてみました。

 

高度生殖医療を受ける

遺伝による無精子症や乏精子症があっても、精巣内精子採取術で精子を採取できれば、顕微授精で子どもを得られる可能性があります。

 

クラインフェルター症候群の場合、純系の5割は精巣内精子採取術で精子を採取することができます。ただし35歳を過ぎると回収率が有意に下がるため、精液の凍結保存も視野に入れ、必要に応じて高度生殖医療による治療を行いましょう。

 

着床前診断を利用する

着床前診断は、体外受精で得られた胚の一部を採取して、染色体や遺伝子に異常がないかを調べる検査です。夫婦染色体検査と違って子どもの染色体を直接調べることができるため、流産リスクや先天性疾患リスクをより反映した結果が得られます。

 

ご夫婦のいずれかに均衡型転座がある場合でも、染色体の組み合わせで正常な遺伝子の胚が生じます。この正常な胚を着床前診断で見分けて子宮へ移植できれば、流産を回避できる可能性が高まるのです。

 

こちらもおすすめ

【医師監修】着床前診断を不妊クリニックで受けるには?条件や費用について解説

 

まとめ

不妊において、遺伝を原因とするものはごく一部です。中には遺伝と密接に関わる不妊原因もありますが、もし遺伝を引き継いでいたとしてもその影響力には幅があり、妊娠する見込みが少ないものから十分妊娠が可能なものまでさまざまです。

 

遺伝以外にも不妊原因が隠れていることはあるので、まずは不妊検査を受けてほかに原因がないかどうか確認してみましょう。

 

株式会社B&C Healthcareでは、米国検査機関への受精卵凍結輸送による着床前診断を実施しております。遺伝に強い不安を感じている場合、お力になれることがあるかもしれません。無料の資料請求をご利用いただけますので、興味のある方はぜひお問い合わせください。

 

 

監修

一倉絵莉子 先生
六本木ヒルズクリニック

産婦人科医 / 六本木ヒルズクリニック 日本産科婦人科学会専門医、日本女性医学学会会員 日本大学医学部卒業。川口市立医療センター、北里大学メディカルセンター産婦人科等に勤務。

CATEGORY

ARCHIVE

SCROLL
資料請求
事前カウンセリング