妊娠や出産を希望する人にとって、心配事の一つなのが赤ちゃんの染色体異常。特に出産時の年齢が上がるとリスクは高まりますが、そうではなくても不安に感じられる方もいることでしょう。今回は、そんな悩みを抱える人のために、染色体異常の種類と検査法についてお伝えしていきます。
ヒトの染色体には、22対(44本)の常染色体と、1対(2本)の性染色体があります。染色体異常は、これらの染色体に数的異常または構造異常が起きた状態となります。
数的異常には、本来2本で1対の染色体が3本になった「トリソミー」と、1本になった「モノソミー」などがあります。一方、構造異常には染色体または染色体の一部が欠失、重複した状態のほか、染色体が違う染色体と不適切に結合する「転座」などがあります。これらが、染色体異常の代表的な種類となります。
ほかにも、1つの受精卵の中に、遺伝子型が違う2つ以上の細胞系列を伴う「モザイク」という異常の種類もあります。モザイク型では、正常な染色体を持つ細胞、異常な染色体を持つ細胞が混在した状態になります。このように、一言で染色体異常といっても、実にさまざまな種類があるのです。
染色体異常とは、「染色体が1本多い」「染色体が1本少ない」「構造が違う」などの異常が生じることによって起こるものです。実際の染色体異常では、何番目の染色体にどんな異常が生じるのかによって、発現する症状が変わってきます。
染色体異常の種類はたくさんありますが、中でも妊娠継続や出生に至る可能性のある症例として知られている、13番、18番、21番のトリソミーについて解説していきます。
◆13トリソミー(パトー症候群)
13番の染色体が1本多くなることが原因により生じます。先天的な心臓の病気や、全前脳胞症という脳の病気などを合併することがあります。ゆっくりと発達していきますが、言葉の使用は困難となるケースが多いです。こちらの染色体異常があった場合、赤ちゃんの90%は生後1年になる前に亡くなってしまいます。
◆18トリソミー(エドワーズ症候群)
18番の染色体が1本多くなることが原因により生じます。多くの場合は先天的な心臓の病気を伴い、消化管の疾患や口唇口蓋裂などの合併症を有することが特徴です。主に心疾患・心不全・感染症が原因となり、1歳まで生きることができない赤ちゃんは90%と寿命は短くなりますが、中には10歳以上になっても元気に過ごされる方もいます。
◆21トリソミー(ダウン症候群)
21番の染色体が1本多くなることが原因により生じます。約半数が心臓の病気を、10%が消化管の病気を有します。運動の発達には時間がかかりますが、知的発達には個人差があります。療育やリハビリテーションを経て、地元の学校の支援級や特別支援学校に通ったあと、就業される方もいます。
ここでご紹介した染色体異常は、種類を問わず、母体の年齢が上がるほど発生率が高まります。また、上記の3種類以外にもさまざまな染色体異常の種類がありますし、性染色体に生じる異常も存在します。
妊娠中に染色体異常を調べることができる出生前診断の種類としては「羊水検査」や「絨毛検査」などが挙げられます。これらの侵襲的な検査は確定診断ですが、感染や流産のリスクを高めるという心配がありました。
そこで、母体の血液を採取するだけで検査可能な「新型出生前診断(NIPT)」が注目を集めています。新型出生前診断(NIPT)では、13番、18番、21番の染色体異常を調べることが基本となります。
ただし、新型出生前診断(NIPT)では、いきなり侵襲的な検査を受けることは回避できますが、確定的な診断は行えません。さらに、陽性的中率に関しても染色体異常の種類や母体の年齢によって変わってきます。
とはいえ、「陰性的中率」に関しては99.99%という高い水準を誇るため、異常がないということはほぼ確実に確かめることができます。検査で陰性という結果が出れば、ほぼ安心して出産に臨めることになります。
このように新型出生前診断(NIPT)は母体への負担が少ない検査ですが、基本的には13番、18番、21番の染色体しか調べることができません。ほかの種類の異常の存在があとからわかる可能性もあります。そこでご紹介したいのが、次項でご説明する着床前診断です。
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【医師監修】着床前診断は体外受精が前提?体外受精の流れや期間・費用を解説
「着床前診断」は、受精卵の段階で検査を行うことになるため、染色体異常が検出された場合は、その受精卵を使用しないという選択が可能となります。着床前診断では体外受精の妊娠率を高め、流産のリスクを下げることができるため、特に高齢出産の方にとっては安心につながります。
また、妊娠してから実施する出生前診断では、染色体異常があると判明したあとでどのような選択をするか悩まなければなりません。しかし、受精卵の状態で検査する着床前診断では、そのような悩みを抱える心配がないことがメリットです。
日本国内で着床前診断を受けるとなれば、検査対象となる人が限られており、日本産科婦人科学会が定める要件を満たす必要があります。重い遺伝病の子供を出産する可能性がある場合や、流産をくり返している場合に制限されており、学会に審査を申請することになります。
そのため、着床前診断を受けるために海外に足を運ぶご夫婦もいますが、時間的にも経済的にも負担となってしまいます。
日本国内にいながらにして、希望者が受けられる着床前診断として、株式会社B&C Healthcare(B&C Healthcare)のプログラムがあります。B&C Healthcareの着床前診断では、日本の医療機関で体外受精によってできた受精卵を、米国の検査機関に輸送する体制を整えています。日本の学会が設ける要件を満たしていなくても、検査対象となるのです。
米国で検査を実施するのは、実績の豊富な検査機関です。受精卵の到着後、2〜5週間ほどで結果が通知されることになります。染色体異常がないことが確認されたら、受精卵が日本に輸送され、胚移植と着床を経て出産に至ります。
さらに、日本では産み分けを目的とした着床前診断は実施できませんが、B&C Healthcareでは高い確率で希望する性別の赤ちゃんを授かることが可能です(統計上98%以上といわれています)。染色体異常について検査する過程で、性別を決める染色体についても調べるため、希望する性の子供が生まれる受精卵を選べば産み分けできるというわけです。
もちろん、B&C Healthcareの着床前診断でも、ダウン症候群、エドワーズ症候群、パトー症候群といった染色体異常のリスクにも対応できます。染色体異常にはさまざまな種類があるため、高齢出産や流産の不安を抱えている方は、着床前診断を検討してみてはいかがでしょうか?