生まれつき赤ちゃんに生じる異常について「染色体異常」や「遺伝子異常」といった言葉を耳にしたことのある方もいるでしょう。染色体異常と遺伝子異常には、具体的にどんな違いがあるのでしょうか。今回は、2つの異常の特徴や、これらの遺伝性疾患を着床前診断で避けることができるか否かをお伝えしていきます。
染色体異常とは、通常は2本で1組になっている染色体の数が増減したり、形態に変化したりする異常の総称です。わかりやすくいうと、染色体の数や構造が本来のものとは異なり、何らかの異常が生じている状態を指します。
染色体の数が3本に増える異常はトリソミー、1本に減る異常はモノソミーといい、いずれも「数的異常」に含まれています。染色体の一部が欠けるなど、形態に関する異常は「構造異常」と呼ばれています。
ヒトの染色体は全部で23組46本ありますが、どの染色体にどんな異常が生じるかによって、発生する病気も異なります。染色体異常の数的異常による障害として代表的なものは次の通りです。
◆ダウン症候群
ダウン症候群は、21番目の染色体がトリソミーになる異常であることから、「21トリソミー」とも呼ばれています。赤ちゃんに生まれつき生じることがある染色体異常として、最も多いものです。です。
ダウン症候群の赤ちゃんは特徴的な顔つきになり、さまざまな症状がありますが、約半数が心臓の病気を、約20%が消化管の病気を有します。そして、運動発達は通常、時間が2倍かかるペースで発達します。知的発達は個人差が大きく、特に言葉の表現には時間がかかります。小児期だけではなく、成人期にもいろいろと問題を生じることがあるため、継続的な医療管理が必要になります。
◆パトー症候群
パトー症候群は、13番目の染色体がトリソミーになる異常であることから、「13トリソミー」とも呼ばれています。重度の奇形を複数合併していることが多く、赤ちゃんの9割は生後1年を迎える前に亡くなってしまいます。
◆エドワーズ症候群
エドワーズ症候群は、18番目の染色体がトリソミーになる異常であることから、「18トリソミー」とも呼ばれています。心疾患や感染症などが原因となり、赤ちゃんが1歳になる前に亡くなってしまう割合は9割に達します。多くの合併症をもって生まれてきますが、10歳以上の生存例の報告がわずかにあります。
赤ちゃんの染色体異常は必ずしも遺伝するものではなく、両親に染色体異常がなくても偶発的に発生することがあります。染色体異常がある受精卵では着床しにくく、流産しやすいという特徴もあるため、実際には出産に至ることができないケースも少なくありません。
染色体異常は染色体の数や構造に変化が起こるものを指します。それに対して、遺伝子異常は親から子へと遺伝子が伝えられたときに、その遺伝子の異常が病気の原因となるものを指します。染色体異常の場合は必ずしも遺伝するわけではないため、この点にも違いがあります。
遺伝子異常の種類としては、「単一遺伝子疾患」と「多因子遺伝子疾患」が挙げられます。単一遺伝子疾患とは一つの遺伝子変異が原因となるもので、多因子遺伝子疾患は複数の遺伝子の変異が原因となるものです。そして、多因子遺伝子疾患の場合は遺伝因子と環境因子の影響を受けるとされており、ほとんどの疾患の原因につながっていると考えられています。
◆単一遺伝子疾患
フェニルケトン尿症、先天性甲状腺機能低下症、ハンチントン病などが含まれます。
フェニルケトン尿症は、アミノ酸の代謝異常によって、適切な治療を行わなければ発達遅滞やけいれんなどを引き起こす病気です。
先天性甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンの分泌が不十分となり、元気がない、体重が増えないといった症状が生じます。
ハンチントン病は、不随意運動を主体とする病気であり、手足や全身が自分の意志に反して動いてしまいます。舞踏会で踊っている様子に似ていることから、過去には「ハンチントン舞踏病」とも呼ばれていました。
それぞれの病気の患者数はそれほど多くないものの、他にも様々な病気があり、単一遺伝疾患に該当する病気は数千種類以上あるとされています。
◆多因子遺伝子疾患
先天性心疾患、口唇口蓋裂、二分脊椎、ヒルシュスプルング病などが含まれています。ヒルシュスプルング病とは、消化管の蠕動運動に必要な神経細胞が欠如するために、腸閉塞を起こす病気です。
また、糖尿病や高血圧などのよくある病気も含まれ、遺伝的な因子がある状態で、環境因子が引き金を引くといわれています。がんに関しても遺伝的な因子の影響が強くなることがあります。
親が遺伝性疾患を発症しているかいないかに関わらず、親が保因者であれば子に病気が遺伝することがあります。
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【医師監修】着床前診断は産み分けに有利?確率や気になる内容、検査の流れについても徹底解説
受精卵の染色体異常は、女性の年齢が高くなるほど割合が増えることがわかっています。若い女性の子供であれば必ずしも染色体異常がないわけではなく、ダウン症候群などの病気のある赤ちゃんを授かる可能性はあります。しかし、染色体異常のリスクを下げたい場合には、高齢出産を避け、なるべく若い年齢での出産計画を立てると良いでしょう。
近年はキャリアを重視する女性も増加しており、晩婚化が進んでいますが、子供を出産したいという思いがある場合は、高齢出産に伴うリスクを理解しておく必要があります。
そこで、染色体異常や遺伝子異常を避けるためには「着床前診断」を受ける方法があります。着床前診断では、受精卵の段階で染色体異常や遺伝子異常の有無を検査するので、病気をもたない可能性の高い受精卵のみを選別して着床させることができるのです。
ただし、日本国内で着床前診断を受けるためには、いくつかの条件を満たし、医療機関が申請を行い、日本産科婦人科学会の認可を得ることになります。誰でも希望すれば検査を受けられる状況にはなっていないため、場合によっては海外で着床前診断を受ける方もおられます。
株式会社B&C Healthcare(B&C Healthcare)の着床前診断プログラムは、一般的な着床前診断とは違い、基本的に希望者が検査を受けられます。
日本の医療機関で体外受精を行ったあと、得られた受精卵(または受精卵から採取した細胞のDNA)を米国の機関に輸送する流れとなります。検体が米国の検査機関に到着してから約2〜5週間で結果が通知されますが、一度も海外に足を運ぶ必要はありません。
なお、染色体異常の有無を検査し、着床率を高めるためには「着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)」、遺伝子異常の検査には「着床前単一遺伝子疾患検査(PGT-M)」が用いられます。
加えて、希望の性別の赤ちゃんが生まれる受精卵を選ぶと、高い精度(統計上98%以上といわれています)で男女産み分けが可能となります。
海外の検査機関に輸送する仕組みついては違法性がなく、輸送先の機関も年間数万件の検査実績があるため、安心してプログラムを利用できます。染色体異常や遺伝子異常についてご不安がある場合には、B&C Healthcareの着床前診断について情報収集してみても良いかもしれません。