「赤ちゃんが欲しい」と思っても、全てのご夫婦が自然にまかせて赤ちゃんを得られるわけではありません。
とくに35歳を超えると、自然妊娠は徐々に難しくなるといわれています。
では、クリニックで不妊治療を受けた場合、どのくらいの割合で妊娠できるのでしょうか?今回は不妊治療の妊娠確率について、ステップ別に解説していきます。
クリニックでは不妊検査を受けたのち、以下に示した不妊治療法をひとつずつ試していきます。試してみて合わない場合は次の段階へ、というように階段を上がるイメージで治療が進められるため、不妊治療の現場では「ステップアップ方式」と呼ばれています。
まずはそれぞれのステップでどんな治療をおこなうのか、費用はどのくらいなのかを見ていきましょう。
ちなみに不妊検査の結果や年齢によってはタイミング法や人工授精などのステップを省略する場合があります。
不妊治療の最初のステップがタイミング法です。医師が排卵日を予測して妊娠しやすい日を指定し、ご夫婦はその指定日に応じて性交渉をおこないます。
家庭でおこなうタイミング法と違い、クリニックのタイミング法は医学的にもっと踏み込んだ内容です。クロミフェンなどの内服薬やhMG・hCG注射を組み合わせて十分な卵胞発育や排卵を促すため、排卵障害や黄体機能不全がみられる場合にある程度効果が期待できます。
タイミング法でかかる費用の相場は、保険適用で1回あたり数千円~1万円程度です。
タイミング法で授からないときは、人工授精(AIH)にステップアップします。人工授精はあらかじめ採取しておいた精子を子宮に注入する方法です。
女性生殖器のどこに注入するかによって呼び名が変わり、一般的に子宮頸管内人工授精(ICI)、子宮腔内人工授精(IUI)、卵管内人工授精(FSP)などがあります。人工授精は性交障害や勃起障害など性交が難しいケース、または頸管粘液が不足していて精子が卵子に届きにくいケースに適しています。
人工授精は自由診療で、費用の相場は1回あたり1~3万円です。ただし2022年4月から保険適用に変わるため、負担が軽減されます。
人工授精の次のステップが体外受精です。取り出した卵子と精子をシャーレ内で受精させ、培養液の中で胚になるまで育てて子宮に移殖します。
一般的な体外受精では卵子に精子を振りかけて自然に受精させますが、正常な精子の数が少ない場合は顕微授精(ICSI)という方法をとります。顕微授精は受精に適した精子をひとつ選びとり、顕微鏡下で卵子に直接注入する方法です。従来の体外受精に比べて受精率が高く、体外受精で生まれた赤ちゃんの約60%が顕微授精で受精しています。
体外受精は自由診療で、費用の相場は1回あたり30~60万円です。申請すれば助成金が受け取れますが、2022年4月からは保険適用に切り替わります。
不妊治療の妊娠率には、年齢が密接に関係しています。ここでは各ステップの妊娠率および年齢との関係、次のステップに移る目安の期間を解説します。
不妊のカップルがタイミング法で妊娠する確率は、1周期あたり5%ほどです。1回だけだと確率は低いですが、周期を重ねると35歳未満は約20%、35~39歳は約15%にまで上がっていくというデータがあります。40歳以上は累積でも約5%で、あまり高くはありません。
それぞれの事情によって異なりますが、目安として6ヶ月を過ぎて妊娠しない場合は次のステップである人工授精に移行します。
人工授精の妊娠率は1周期あたりおよそ5~10%です。周期を重ねると妊娠率は上がり、30代までなら約20%にまで高まります。40歳以上ではそれほど高くならず、10~15%ほどです。
人工授精で妊娠する方のほとんどが4回以内で妊娠しています。5回目以降からは妊娠する可能性が低くなるため、次のステップである体外受精に移行します。
体外受精の妊娠率も、やはり年齢によって大きく変わります。日本産科婦人科学会のデータを見ると、35歳までの体外受精における妊娠率はおよそ40~45%です。38歳は約35%、40歳では約30%と、年齢が進むにつれて下降していきます。
逆に流産率は上昇し、30代半ばまでは10%前後だったのが40代では20~40%にまで上がっています。
「体外受精なら高年齢でも大丈夫」と思われがちですが、卵子や生殖機能の老化から免れるのは高度生殖医療でも難しいのが実情です。データを踏まえて、少しでも早いうちに治療をスタートすることが重要といえるでしょう。
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【医師監修】着床前診断を不妊クリニックで受けるには?条件や費用について解説
着床前診断とは、受精卵の段階で染色体や遺伝子異常の有無を調べて問題の少ない胚を子宮に戻す方法です。繰り返す流産や遺伝病の回避を目的におこなわれますが、着床前診断を受けた胚を移植すれば妊娠率は上がるのでしょうか?
日本産科婦人科学会では着床前診断の臨床研究をおこなっていますが、その中間報告によると流産率はおよそ10%に低下したとのことでした。流産率が低下した理由は、着床不全や流産につながる染色体異常の胚の移殖を回避できたことによるものと考えられます。
一般的な体外受精では、受精卵や胚をグレードに準じて評価します。高グレードの胚ほど着床しやすい傾向にありますが、中には高グレードにもかかわらず染色体異常をもつ胚も含まれます。染色体異常胚を移殖しても、そのほとんどは出産につながりません。着床前診断を受ければ、100%ではありませんが染色体異常胚を見分けられます。そのため流産率の低下が期待できるのです。
着床前診断では戻せる胚が限られてくることも考慮しなければなりません。ゆえに「流産率が下がる=妊娠率が上がる」とはいえないのですが、それでも流産率の低下は不妊治療をするご夫婦にとって大きなメリットとなります。繰り返す流産の身体的・心理的負担ははかり知れず、時間もお金も費やして疲弊するご夫婦が少なくないからです。
着床前診断には流産率を低下させるメリットがあります。ですが、日本国内のクリニックで受けるには個別の審査が必要です。繰り返す流産の既往や深刻な遺伝病の有無が申請の条件となり、申請をしても認可が下りるまで半年ほど待たされてしまいます。規制のない海外なら審査は必要ありませんが、慣れない外国で生殖医療を受けるのは相当なハードルです。
ですが現在は、受精卵や受精卵から採取したDNAだけ海外に渡航させるという方法で、申請不要な着床前診断を受けることができます。
株式会社B&C Healthcareの着床前診断は、日本にいながら着床前診断を受けることができ、個別審査も必要ありません。また、ご夫婦の希望に応じて男女産み分けにも対応しています。
昔こそ敷居の高かった着床前診断ですが、今は自由に受けられる時代へ変わりつつあります。
不妊治療の妊娠率は年齢によって大きく変動し、とくに30~40代の不妊治療はたった1年の差が大きく影響することがあります。不妊治療は高額な費用がかかるイメージがありますが、どのステップまで進めるかはご夫婦で選択できます。貴重なタイムリミットを逃さないよう、まずは不妊検査を受けるところから始めてみてはいかがでしょうか。