不妊治療をしていくうえでさまざまな悩みや壁に当たってしまうことがあります。あらかじめあたるであろう壁や悩みを知っておくことで、前向きに対策をすることができるかもしれません。ここでは、不妊治療中に直面しやすい悩みとその対策をご紹介します。
不妊治療の悩みについてご紹介する前に、まずは不妊治療の実態について知っておくことが必要です。ここでは、さまざまなデータから不妊と不妊治療の実態をお伝えします。
日本産婦人科医会が発表しているデータによると、日本において不妊であることが分かっているカップルは約10~15%とされており、約10人に1人が不妊に悩んでいるということになります。
さらに厚生労働省によると、自分が不妊かもしれないと悩むカップルの割合は35%で、約3組に1組が不妊症ではないかと悩み、検査をするべきなのか検討されているそうです。
その中でも実際に不妊の検査や治療を受けたことがある、または現在受けているというカップルは18.2%で、全体の約5.5組に1組の割合になります。不妊に悩むカップルは意外にも多く、不妊で悩むことは稀なケースではありません。
不妊治療を経て生まれてきた子どもの割合は、2019年では全出生児のうちの7%程度とされており、約14人に1人が不妊治療で生まれてきており、不妊治療自体が決して珍しいものではなくなりました。
次に出生に至るまでの治療における妊娠率を見てみましょう。2021年に発表された、2017年における移植周期あたりの妊娠率を見てみると、1回あたり、凍結融解胚(卵)で 34.39%、体外受精で23.11%、顕微授精で20.29%となり決して高い数値ではありません。
何度治療を繰り返しても、なかなか子どもができないという悩みはこのデータからも裏付けられていると言えます。
不妊治療にはお金がかかりますので、できることなら治療費を捻出するために働きながら治療を受けたいものです。
厚生労働省が発表したデータを見てみると、不妊治療をしたことがある、あるいは不妊治療を予定しているという方の中で、不妊治療と仕事を両立していたり両立を考えている方は53.2%となっています。
しかし実際は仕事との両立ができなかったという人の割合が34.7%となっており、少なくありません。なぜ、両立できなかったのかという理由については、精神的・体調・体力の面での負担を理由にする方の割合が多く、次に通院回数の多さが挙げられています。
次に不妊治療によって生じうる悩みの1つとして、高額な治療費が挙げられます。しかし、不妊治療は制度改正によって令和4年4月から保険適応となり、負担が以前よりも少なくなった面もあります。不妊治療にかかるお金の面について、解決方法を考えていきましょう。
前述したように不妊治療と仕事を両立することが難しいということは、データでも証明されています。それだけ多くの人が持つ悩みともいえるでしょう。
治療のプロセスの中でホルモンバランスを崩してしまったり、メンタル的に落ち込んだりしてしまうことに加え、不妊治療は排卵のタイミングなどによって治療の予定が入るので仕事の調節が困難になることが考えられます。こうした体調や時間管理において職場に迷惑をかけてしまうということを悩んでしまう方もいます。
職場によっては仕事を続けながら不妊治療を受けられるよう体制を整えているところもありますが、支援制度等の実施状況を見ると、支援を行っている企業は全体の3割程度にとどまっています。
本来であれば勤め先に体制を整えるようにゆだねたいところですが、会社の方針を変えるのは難しいと考えられます。また一緒に働く人によっては不妊治療に理解がある職場と、そうでない場合もあります。
その場合、ご自身で勤め先に不妊治療であることを伝える他に、厚生労働省が作成する不妊治療連絡カードというツールも存在します。まずはカードを活用して不妊治療をしながら仕事が続けられるように積極的に職場に掛け合ってみるというのも1つの方法です。
不妊治療はやはりお金がかかってしまいます。2020年度の厚生労働省の調査では、検査のみ受けた場合やタイミング法の経験者は累計自己負担額が10万円未満の割合が約7割程度。
そこからステップアップして体外受精や顕微授精を経験した人は、医療費の総額が100万円以上の割合が半数を超え、200万円以上を費やした人も3割弱いました。
ただし令和4年4月より、不妊治療の中で人工授精等の「一般不妊治療」、体外受精・顕微授精等の「生殖補助医療」は保険適用されることとなりました。そのため、上記よりも自己負担額を抑えて治療が受けられる可能性があります。
地域によっては治療費の助成制度もあるため、これらを組み合わせて不妊治療にかかるお金の悩みを解消してみてはいかがでしょうか。
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不妊治療の中ではホルモン剤を接種したり、妊娠しやすい体を作るための措置をとっていきますが、こうした治療の中で体調や気分に変調をきたす可能性も考えられます。採血など検査や治療は痛みを伴うものも多く、身体的に苦痛と感じるかもしれません。
それ以外にも、不妊治療のための医療機関は待ち時間が長いことも特徴です。長時間座っていて足腰が痛くなるということもあるでしょう。
身体的な苦痛は医療機関で相談しながら適宜解決をしていくことがベターといえるでしょう。痛み、治療薬による体調不良は医療機関からのアドバイスで解決できることがあります。待ち時間が長いことへの辛さも、我慢せずに相談することで、ほかの場所で待つなど何かしらの解決策が導き出せるかもしれません。
体調面は一人で我慢して悩むのではなく、必ず医師や看護師といった専門家に相談しながら解決していきましょう。
不妊治療によって身体以外にも精神的な不調による悩みも考えられます。まずは治療の影響でホルモンバランスが乱れ、気持ちが不安定になりやすくなります。
そもそも不妊治療に時間やお金をかけても結果につながらなかったときには落ち込んだり、周囲からの妊娠を期待する声もストレスに感じることもあるでしょう。
これらを解決するためにはやはりセルフケアが重要です。不妊治療を続ける限りストレスがゼロになることはありません。時にはまあいいかと肩の力を抜きながら、ぜひ自分に日頃から頑張っているご褒美を与えたり甘やかす時間も作ってみてください。
治療をしている医療機関の看護師や医師に、今の気持ちを相談してみるのも気分転換につながるかもしれません。
不妊治療によって人間関係に悩むという方も少なくありません。その対象はさまざまで、夫、実父母、義父母、友人などです。
この悩みを解決するためには、その都度話し合うことがベターといえるでしょう。夫であれば、不妊治療の必要性について話したり実際に一緒に医療機関を受診して、医師から直接話をしてもらったりするのも良いでしょう。
実父母や義父母、友人に対しても無理せず少し距離を置くことで気持ちがラクになるかもしれません。もし理解が得られそうであれば、積極的に相談することで妊活中もサポートが得られることもあります。周囲に同じ不妊治療を経験している方がいれば、情報交換をしたり、今の悩みも打ち明けやすくなります。
不妊で悩む日本人が増えている中、不妊治療を続けていく上で悩みやストレスなども増えてくるといえます。一人で抱え込んでも解決していくことは難しいので、医師や看護師、パートナーなどを巻き込みながら不妊治療中の悩みやストレスと上手に付き合いつつ、無理せず前向きに妊活を進めていく環境を整えていきましょう。