最近はメディアで「二人目不妊」という言葉を目にする機会が多くなりました。
二人目不妊はどんな原因で起こるのでしょうか?また、二人目不妊の解決策はあるのでしょうか?
今回は「二人目不妊かもしれない」と悩むご夫婦に向けて、考えられる原因と乗り越えるためのヒントをまとめました。なかなか妊娠できない方はもちろん、これから妊活を考えている方もぜひご一読ください。
二人目を希望して妊活しているにもかかわらず妊娠しないことを「二人目不妊」といいます。
二人目不妊で悩む方は近年増加中です。ある不妊専門のクリニックでは二人目不妊の相談が全体の2~3割にのぼるといい、自治体の不妊専門相談センターでも問い合わせの割合が増えています。
一人目を出産していると、周りはすぐ妊娠できるものと考えがちです。二人目不妊で悩んでいるのに「まだ妊娠しないの?」などと声をかけられて、落ち込む方も多いでしょう。
実は不妊で悩んでいることを相談すると「一人いるのだからいいじゃない」「贅沢だよ」と返されてしまうことも。周りから共感を得られず、なかなか周囲に相談できないという点も二人目不妊ならではの悩みです。
ですが、子どもが欲しいという気持ちは一人目でも二人目でも変わりません。二人目を考えているのに授からないときは、思い当たる原因がないか考えてみましょう。
二人目の妊活は子育て期間と重なるので、一人目のときとはガラリと環境が変わっています。
ここでは二人目不妊の原因として代表的なものをピックアップしたので、思い当たることはないかぜひチェックしてください。
二人目不妊の原因としてもっとも可能性が高いのが「加齢」です。一人目を授かったときと比べ、二人目では確実に年齢を重ねています。重ねた年数だけ卵子や精子は老化しているのです。
卵子や精子が老化すると、染色体のエラーが多くなります。染色体にエラーがあるとうまく受精できず、受精できたとしても着床までこぎつけられないのです。
また、もともと患っていた子宮の病気が加齢によって進行し、妊娠しにくくなるケースもあります。「35歳以上になると妊娠しにくい」というのは今や多くの方が知っていることですが、それは二人目のときも同様です。
子育て中は家事や育児に追われ、ご夫婦ともに忙しい時期です。夜になると疲れ果てて、セックスをする余裕がなくても無理はありません。
ですが、セックスの回数が少なければ妊娠はしづらくなります。
ある調査によると、排卵日前後に1回だけセックスするカップルよりも、週に2~3回以上セックスするカップルの方が妊娠率が高いそうです。
回数が多いほど妊娠しやすい理由として、
・回数が多い方が卵子と精子が出会いやすくなる
・頻繁にセックスすることで女性の子宮が着床しやすい環境に変化する
などがあります。
妊娠のメカニズムはホルモンによって調整されています。ですが、子育てや仕事、家事で忙しくしていると十分な睡眠や休息がとれず、ホルモンバランスを崩してしまうことも。ホルモンバランスが崩れてしまうと、受精や着床がうまくいかないのです。
また「出産して体重が増えた」、逆に「産後のダイエットで無理をした」という場合もホルモンバランスが乱れている可能性があります。
月経はホルモンバランスを知るためのいい目安です。月経周期がまちまちだったり、月経中にレバーのような血の塊が出てきたりするときは注意しましょう。
一人目の出産のときにできた傷がうまく治っていないと、それが不妊につながることがあります。
帝王切開の傷が癒着したときに考えられる不妊は、卵管閉鎖やピックアップ障害です。また胎盤が癒着して剥離で大出血をすると子宮内膜が薄くなり、次の妊娠が難しくなることがあります。
一人目の出産で何らかのトラブルを経験している方は、早めに受診を検討しましょう。
二人目不妊ではさまざまな原因が考えられますが、問題を解決するにはどうすればいいのでしょうか?
必要なのは「妊活のための環境づくり」です。具体的な解決策をみていきましょう。
妊娠するには、エストロゲンやプロゲステロンなどのホルモンバランスが重要です。ホルモンバランスを正常化するために、以下の点を見直してみましょう。
・十分に睡眠をとる
・ストレスをためない
・身体を冷やさない
・暴飲暴食を避ける
・適度に運動をする
また、肥満や痩せすぎは不妊の原因になります。妊活時のBMI(Body Mass Index)は、19~24の範囲に収まるのが理想です。
BMI=体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)
一人目の出産後で大幅に体重が変わっていることもあります。「最近気にしていなかった」という方はぜひチェックしてみましょう。
自然妊娠するためにはセックスをする必要がありますが「忙しい毎日でそんな気になれない」「妊活のプレッシャーがあるとうまくいかない」という人が多いのも事実です。
セックスできないといっても、気分がのらない、勃起障害がある、性交痛がひどいなど原因はさまざま。勃起障害や性交痛は処方で治療できることもあるので、まずはクリニックに相談してみましょう。
また、最近ではシリンジ法を活用する女性も増えています。シリンジ法とはマスターベーションで採取した精液をシリンジ(針のない注射器)で膣内に注入する方法です。専用キットは薬局やインターネットで購入することができ、自宅で気軽にチャレンジできます。セックスが難しいケースで試してみるといいでしょう。
やれることはやっているのに妊娠しない、そんなときは不妊治療専門のクリニックを受診しましょう。一人目のときに検査をして問題がなかった方でも、二人目のときは何らかの問題が隠れているかもしれません。
では、いつから治療を検討すればいいのでしょうか?目安は「妊活を始めているのに1年以上妊娠しないとき」です。
年齢が35歳以上、生理不順があるなどの場合はすぐに受診を検討してもよいでしょう。
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二人目不妊で治療を受けるときは、一人目の場合と多少流れが違います。すでに不妊治療をしたことがある方もぜひチェックしてください。
不妊治療専門のクリニックの中には「子連れ受診NG」としているところがあります。そうしたところでは、上の子を伴って受診するのは難しいでしょう。
ですが、最近では二人目不妊が増加していることを受けて「子連れ受診OK」としているクリニックが増えています。ただ受け入れるだけでなく、待合室を分けるなどの配慮をしてくれるクリニックもあるようです。
とはいえあまりに遠方だと負担になってしまうので、一時預かりなども利用しながら通いやすいクリニックを選ぶといいでしょう。
クリニックが決まったら、まずは不妊検査からスタートします。
不妊検査では血液検査や膣内エコー検査などをおこない、性感染症の有無やホルモンバランスの状況、排卵の様子などをチェックしていくことがほとんどです。
多くの場合、治療は以下の順でステップアップします。
治療のステップ | 方法 |
①タイミング法 | 排卵日を調べて、自宅でタイミングを取る |
②人工授精 | あらかじめ採取した精子を人工的に子宮へ注入する |
③体外受精 | あらかじめ採取した精子と卵子をシャーレ内で受精させ、子宮へ戻す |
④顕微授精 | 顕微鏡下で卵子に精子を直接注入する |
流れ自体は一人目の不妊治療と変わりませんが、二人目不妊では年齢を考慮して早めにステップアップすることが多いようです。
子連れ受診を認めていないクリニックの場合、上の子の預け先に困ることもあるでしょう。
近隣に頼れる親族がいなければ、一時預かり保育やファミリー・サポート事業を検討します。預かりの相談に関しては役所の窓口のほか、相談ダイヤルを設けている自治体も多いのでぜひ利用してみましょう。
不妊治療は2022年4月より保険適用化されました。これまで100%自己負担だった治療費ですが、保険適用以降は3割負担に軽減されています。
3割でも決して安い金額ではありませんが、従来と比べて治療のハードルは下がっているといえるでしょう。
ただし、体外受精(顕微授精)を保険適用で受ける場合はいくつかの条件があります。
・治療開始時の女性年齢が43歳未満であること
・子ども1人あたりの胚移植回数は、40歳未満なら6回まで、40~43歳未満なら3回まで
不妊治療を保険適用で受けるときは、年齢制限があることを覚えておきましょう。
不妊治療をスタートするとき「体外受精をすれば高確率で授かるはず」と考える方もいらっしゃいます。
ですが、体外受精は万能ではありません。体外受精では順調に成長している良好な胚を選んで着床させますが、妊娠に結びつかないこともあります。
見かけ上正常な胚でも染色体に異常があれば、うまく着床することができないのです。
染色体異常のある胚は着床しづらいことをお伝えしました。では、染色体レベルで胚を見分ける方法はあるのでしょうか?
近年注目されているのが着床前診断です。着床前診断とは受精卵の一部を採取して染色体や遺伝情報を調べる方法で、日本国内のクリニックでもおこなわれています。
日本産科婦人科学会の調査によると、通常の体外受精での流産率がおよそ25%だったのに対し、着床前診断を受けた場合では約10%でした。
「何度も体外受精をしているのに妊娠しない」という方には有意義な検査です。流産の負担を軽減できる点も大きなメリットといえるでしょう。
二人目不妊の原因はさまざまですが、もっとも可能性が高いのは「加齢」です。一人目でも二人目でも不妊治療は年齢が若いほど成功しやすいので、違和感を感じたら早めに受診を検討しましょう。
「何度も体外受精をしたのに授からない」というケースでは、胚の染色体に異常があるのかもしれません。染色体異常は加齢にともなって増加していくので、心配な方は着床前診断も視野に入れてみましょう。