ドラッグストアで手軽に買える妊娠検査薬は、自宅で妊娠の有無を調べられる便利なアイテムです。ですが、妊娠検査薬で陽性反応が出たのに生理のような出血があると「もしかして流産?」と動揺してしまう人も少なくありません。
妊娠検査薬が陽性なのに生理のような出血が起こるのは、一体何が原因なのでしょうか?また、病院に行く必要はあるのでしょうか?
今回は「妊娠検査薬で陽性になったのに生理がきた場合」の原因・対処法について解説します。
まずは、妊娠検査薬はどのようにして妊娠が判別できるのか、その仕組みについて解説します。
妊娠検査薬は尿中に含まれる「hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)」の濃度で妊娠しているかどうかを調べます。hCGは受精卵が子宮内膜に着床すると分泌されるホルモンです。hCGの濃度が一定水準に達していれば陽性となり、妊娠している可能性が高いことを示します。
hCG濃度の水準は製品によって多少差がありますが、一般的には50mIU/ml以上だと陽性を示すようです。
妊娠検査薬が使えるのは「生理開始予定日の一週間後」です。
hCGが妊娠4週ごろから尿中に排出されます。妊娠週数は最終月経の開始日を0週0日として数えるので、妊娠4週0日は次の生理開始日にあたります。
ただし、hCGが十分に増えていないと正確な検査ができないので、妊娠検査薬を使うタイミングは生理開始予定日の一週間後が適切です。
妊娠検査薬で陽性なのに生理のような出血がある場合、次のような原因が考えられます。次にひとつずつ解説していきます。
化学流産とは、陽性反応は出たもののその後の超音波検査で胎嚢が確認できない状態のことです。着床に伴って分泌されたhCGが妊娠検査薬に反応しますが、妊娠は終了しているため生理が始まります。
通常の生理とほとんど様子が変わらないため、妊娠検査薬のない時代は気づかれることがありませんでしたが、妊娠検査薬が普及してからは化学流産が見つかるようになりました。
化学流産は健康で若いカップルでも30~40%が経験する一般的な現象です。また化学流産という呼び方もあくまで通称であり、医学的には流産としてカウントされません。
着床出血は、受精卵が子宮内膜にもぐりこんだ(着床)ときの刺激で起こる出血です。一般的に出血量はごくわずかであることが多く、おりものに血が混ざってピンクまたは茶色のような色を示します。出血する期間は1~2日程度です。
着床出血は自然な現象なので、過度な心配をする必要はありません。出血のほかに「眠い」「だるい」「微熱がある」「お腹が張る」などの妊娠初期症状があらわれることもあります。
妊娠検査薬で陽性を示した上でわずかな出血があるときは妊娠している可能性が高いので、病院を受診しましょう。
不妊治療でhCG注射を打っている場合、妊娠していなくても妊娠検査薬が陽性になることがあります。実際には妊娠していないため、生理が始まります。
尿に血液やタンパク質、糖などが混じっていると、妊娠検査薬の結果が正しく出ないことがあります。
閉経にさしかかった女性は尿中hCGが高くなることがあり、妊娠検査薬で陽性を示します。陽性といっても実際には妊娠していないので、通常どおり生理が開始します。
受精卵は通常であれば子宮の中に着床しますが、まれに卵管や卵巣などに着床してしまうことがあります。これを異所性妊娠といいます。
異所性妊娠でもhCGは分泌されるので、妊娠検査薬は陽性を示します。さらに異所性妊娠は不正出血や痛みを伴うことがあり、それを生理と間違ってしまうことがあるのです。
多量の出血や激しい痛みがある場合は緊急性が高いので、すぐに病院を受診しましょう。出血や痛みがない場合でも異所性妊娠をそのまま継続することはできないため、病院での処置が必要です。
卵巣がん、子宮がんなどの一部のがんはhCGを産生することがあり、こうしたがんはhCG産生腫瘍と呼ばれます。
がんから分泌されたhCGが妊娠検査薬に反応すると、結果は陽性を示します。ですが実際には妊娠していないため、陽性なのに生理が始まるということが起こるのです。
検査が陽性で出血があったからといってすぐにがんと決まったわけではありませんが、陽性反応が続くようであれば早めに病院を受診しましょう。
妊娠検査薬で陽性だったのに生理がきた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。対処方法は妊娠検査薬を使ったタイミングによって対応が変わるので、ひとつずつチェックしましょう。
妊娠検査薬を使うタイミングは、生理開始予定日の1週間後以降です。正しいタイミングで検査しても陽性かつ生理のような出血がある場合は、異所性妊娠などの病気リスクを考慮して早めの受診が望ましいです。
診察では生理状況を確認するために前回の生理開始日を参考にするので、すぐ答えられるようにメモなどしておくことをおすすめします。
妊娠検査薬を使うタイミングが早い、いわゆる「フライング検査」をした場合は正確な結果が出ないことがあります。
妊娠を待ち望むからこそフライング検査をしてしまう人は多いですが、誤った結果が出ることがあるので、正しいタイミングで検査をするようにしましょう。
再検査して陽性が出た場合は妊娠している可能性があります。出血の原因を見極めるためにも、早めに病院を受診しましょう。
妊娠検査薬は「生理開始予定日の1週間後」に使わないと正しい結果が出ませんが、そのほかにもいくつか使用上の注意点があります。
正しい結果を得るために、次のようなポイントに気をつけましょう。
・決まった秒数で尿をかける
・紙コップなどを使うときは清潔なものを選び、決まった秒数だけ浸す
・検査後はキットを水平に保つ
・10分を過ぎたあとの結果は参考にしない
・開封して日にちが経った妊娠検査薬は使わない
尿をかける秒数は製品によって異なるので、取扱説明書をよく確認してください。
また、妊娠検査薬は基本的にいつでも使えますが、水分を摂りすぎると尿が薄くなって正しい結果が出ないことがあります。朝一番の尿はhCGの濃度が濃く正確な検査が出やすいので、起床直後のタイミングで検査をするとよいでしょう。
妊娠検査薬はホルモン剤や尿の質などが影響して偽陽性(本当は妊娠していないのに陽性が出る)になることがあります。
一度は陽性になったのに実は妊娠していないと分かり、つらい気持ちを抱える人も多いでしょう。
食生活や夫婦生活にも気をつけているのに妊娠しないのは、一体なぜなのでしょうか?
定期的に夫婦生活を送っていても妊娠しない場合、さまざまな原因が考えられます。不妊検査で原因を特定できることもありますが、これといった原因が見当たらないご夫婦もいらっしゃいます。
原因が分からない不妊の場合、ひとつの可能性として考えられるのが「卵子の老化」です。
卵子の老化とは、具体的には「染色体異常のある卵子の増加」をいいます。染色体異常のある卵子はうまく受精・着床することができません。たまたま着床することができても、妊娠初期のうちに流産してしまうことがほとんどです。
染色体異常のある卵子は若い人にも存在しますが、加齢とともに染色体異常の割合は増加します。一般的に35歳以上になると染色体異常のある卵子が著しく増加し、妊娠率の低下や流産率の上昇をまねくとされています。
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【医師監修】「卵子も歳をとる」って本当?卵子の年齢を検査する方法はある?
卵子の老化によって妊娠しづらくなっている場合、対策はないのでしょうか。
近年、妊娠率を高める方法のひとつとして注目されているのが「着床前診断」です。着床前診断は体外受精によって得られた受精卵の染色体を調べる検査で、着床に結びつきやすい受精卵を選ぶことができます。
つまり、着床前診断によって妊娠率の向上や流産率の低下が期待できるのです。
ただし、着床前診断をした結果、移植できる受精卵がないケースもあります。移植できる受精卵がなければ妊娠は見込めません。
とはいえ、染色体異常が原因で何度も流産や体外受精不成功を経験しているカップルは、治療を繰り返すこと自体がかなりの負担になります。着床前診断ではそのような負担を回避できる側面もあるため、今まで辛い経験をしている人にとっては大きな意義があるといえるでしょう。
妊娠検査薬で陽性になったのに生理がきた場合、さまざまな原因が考えられます。ホルモン剤や尿の状態が影響して偽陽性になることも考えられますが、体調に少しでも違和感を感じるときは早めに病院を受診しましょう。
また、きちんと調べたにも関わらず偽陽性だった場合、がっかりすることもあるでしょう。不妊検査を受けてもとくに原因がないときは、加齢による卵子の老化が影響しているかもしれません。
株式会社B&C Healthcareでは、日本にいながらにして米国検査機関の着床前診断を受けられる独自のプログラムをご提供しています。着床前診断に関する詳しい資料も配布しているので、卵子の老化が気になる人はぜひ活用してください。