ドラッグストアで販売されている妊娠検査薬。手軽な上に精度が高く、妊娠しているかどうかをいち早く知ることができるようになりました。しかしその陰で、化学流産を発見するケースも増えています。
化学流産とは一体どういう現象なのでしょうか?また、化学流産が起こったときはどう対処すればよいのでしょうか?
今回は化学流産にまつわる疑問や不安を解消するべく、化学流産の基礎知識や予防対策についてお伝えしていきます。
化学流産とは、妊娠検査薬で陽性になったにもかかわらず超音波検査で妊娠を確認できないことをいいます。
卵子と精子が出会って着床までは至っているのに、なんらかの原因で妊娠が継続できなかった状態です。
医学的には、超音波検査で赤ちゃんを確認したものに限って流産という呼び方をします。したがって超音波検査で確認されない化学流産は、流産としてはカウントしません。
医学的な流産と区別するため、生化学妊娠、化学妊娠などと言い換えられることもあります。ですが、意味としては化学流産と同じです。
化学流産の症状としては、次のようなものがあります。
・いつもより生理のスタートが遅い
・いつもより生理の出血が多い
・いつもより生理痛が重い
流産といっても、症状は通常の生理とほぼ変わりがありません。したがって妊娠検査薬を使わなければ見逃されることがほとんどです。
妊娠が継続していれば、つわりや乳房の張りといった初期症状が現れます。ですが化学流産は超初期段階で妊娠が終了するため、妊娠のサインを感じることはほぼありません。
化学流産すると、妊娠検査薬は次第に反応を示さなくなります。
妊娠検査薬は妊娠によって増加するhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)に反応しますが、化学流産したあとはhCGが分泌されなくなるからです。
ですが、赤ちゃんが確認できないのに妊娠検査薬だけが陽性を示すこともあります。このケースは子宮外妊娠(卵管や卵巣など子宮以外の場所に着床している)の可能性があり、病院での適切な処置が必要です。
化学流産が起こるのは妊娠4~5週あたりです。生理が28日周期だとすると、ちょうど生理開始予定日から2週間のあいだに化学流産が起こることになります。
正常な妊娠であれば、超音波検査で妊娠4~5週、遅くとも妊娠6週までには赤ちゃんを確認できます。この時期になっても確認できないときは化学流産または子宮外妊娠をしている可能性があるため、必要に応じて経過を観察します。
化学流産は見逃されることが多く、実際の確率を明らかにするのは困難です。しかし一説によれば、20~30代前半の比較的若いカップルでも30~40%という確率で起こっていると考えられています。
現在はインターネットで化学流産を報告する人は増えていますが、急に化学流産そのものが増えたわけではなく、妊娠検査薬の精度が上がったことで発見されやすくなったと考えるのが妥当です。
妊娠検査薬の反応で化学流産の疑いがあるとき、病院を受診すべきなのでしょうか。また、化学流産をしたらその後の妊娠に影響はあるのでしょうか。ここでは化学流産をしたときの対応について解説します。
妊娠検査薬が一度でも陽性になったら、産婦人科を受診しましょう。2回以上検査をして陽性から陰性になった場合は化学流産の可能性が高いですが、なんらかの疾患が隠れていることもあるので医師の判断を仰ぐのが適切です。
化学流産のほとんどは治療を必要としません。時期がくれば次の生理が始まり、普段通りに過ごせます。ただし、化学流産後に痛みが強くなったり出血したりする場合は医療機関へ相談しましょう。
化学流産したことをきっかけに妊娠しにくくなることはありません。
ですが、子宮の形態異常や内分泌異常などの影響で流産しやすい体質になっている可能性が考えられます。婦人科系の病気をしたことがあったり、生理が不順だったりする場合は不妊検査を検討しましょう。
化学流産は誰にでも起こる現象です。身体が健康で何も異常がなくても、偶発的に化学流産を繰り返すことは考えられます。
ですが、化学流産を繰り返したとしてもその後の妊娠に影響する可能性は低いでしょう。むしろ化学流産を気にして何度も妊娠検査薬を使っていると、度重なるショックで不要なストレスを抱えてしまうことになります。
心配なときはむやみに妊娠検査薬を使うよりも、病院で検査を受けて自分の身体を客観的に把握するとよいでしょう。
化学流産が起こる原因については明らかになっていないのが実情です。今のところ、原因として考えられるものには以下があります。
化学流産の多くを占める原因として考えられているのが赤ちゃんの染色体異常です。精子や卵子が減数分裂するとき、または受精して分裂するときになんらかの異常を起こしていると考えられます。
染色体異常は健康で若いカップルでも起こるため、化学流産したからといって遺伝子的な問題があるわけではありません。
ただし、年齢を重ねるほど染色体異常のある受精卵の割合が増えることが分かっています。
ホルモン分泌の乱れも化学流産のリスクとして考えられます。
たとえば、妊娠には十分なプロゲステロンが必要です。プロゲステロンが不足すると、着床したとしてもその後の妊娠が維持できなくなります。また、子宮収縮を促すプロラクチンが多いことも流産リスクを高める原因です。
子宮の形になんらかの異常があることも、化学流産のリスクであるといえるでしょう。
通常、子宮はひとつの部屋のような形になっていますが、真ん中に仕切りのようなものがあったり(中隔子宮)、子宮がふたつの部屋のようになっていたり(双角子宮)すると流産につながることがあります。
ただし、子宮の形に異常があるからといってすべてのケースで流産するわけではありません。
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妊娠する前のこととはいえ、化学流産が実際に自分の身に起こってしまうと深いショックを受けることでしょう。化学流産を予防するにはどうすればいいのでしょうか?事前にできる対策についてまとめました。
母体のホルモンバランスや子宮の形態異常によって、流産そのものが起こりやすくなっている場合があります。これらは不妊検査によってある程度明らかにすることが可能です。
もしホルモン分泌や子宮の形に異常があっても、治療をすれば流産リスクを減らせる可能性があります。子宮の形態異常は手術を必要とするものもありますが、最近では負担の少ない内視鏡下手術が主流です。
現在の状態を知ることで妊活をしやすくなるメリットもあるので、赤ちゃんが欲しいと思ったら不妊検査を検討しましょう。
早すぎるタイミングで妊娠検査薬を使用すると、知らなくて済んだはずの化学流産を発見してしまうことがあります。
妊娠検査薬を使うタイミングは生理開始予定日の1週間後、28日周期であればちょうど妊娠5週に入るあたりです。フライング検査で妊娠4週ころから何度も検査をすると、それだけ化学流産に遭遇する確率が上がってしまいます。
妊娠しているかどうかは非常に気になるものですが、結果に振り回されないためにも推奨されたタイミングに従って正しく検査をおこないましょう。
不規則な生活を送っているとホルモンバランスの乱れにつながります。逆にホルモンが正常に分泌されていれば着床や妊娠の維持に役立つので、十分な睡眠と休息を心がけるようにしましょう。
また、卵巣や子宮は冷えの影響を受けやすい部分です。適度な運動で身体をほぐしたり、ゆっくりと入浴して下半身を温めたりすると、血流がよくなりホルモンの改善につながります。
暑い夏でも意外と冷たい飲み物や冷房などで身体を冷やすことがあるので、無理のない範囲で温活を取り入れるようにしましょう。
「もう流産したくない」と強い不安があるときは、着床前診断が有効です。化学流産を含めて初期流産のほとんどは赤ちゃんの染色体異常が原因ですが、着床前診断なら染色体異常のある胚を見分けることができます。
異常がないと判断された胚を子宮に戻せば、染色体異常が原因の早期流産を減らすことができるのです。
実際に着床前診断で流産率が低下したという国内のデータも報告されています。着床前診断を受けるには体外受精が必須となりますが、これまでに流産を繰り返している、体外受精でも不成功が続いているという場合には一考の価値があるといえるでしょう。
化学流産は妊娠検査薬の普及によって数多く発見されるようになりました。若い世代でも高確率で起こる可能性がありますが、症状は軽くその後の妊娠にもほとんど影響はありません。
予防するには不妊検査であらかじめ流産につながるリスクがないか調べておくこと、妊娠検査薬を正しく使うこと、規則正しい生活を送ることなどが有効です。また、すでに流産を繰り返している場合は着床前診断という選択肢もあります。
株式会社B&C Healthcareでは、着床前診断に関する資料を無料で提供しております。着床前診断にできることが詳しく記載されているので、興味のある方は一度目を通されてみてはいかがでしょうか。