自閉症や発達障害の研究が進むにつれて、遺伝の関与が指摘されています。着床前診断は妊娠前に受精卵の遺伝子を調べるものですが、着床前診断を受ければ自閉症や発達障害を防ぐことはできるのでしょうか?
今回はそんな疑問にお答えするべく、着床前診断で防げるもの・防げないものをご紹介します。
結論から伝えると、着床前診断で自閉症をはじめとする発達障害を防ぐことはできません。
また、発達障害以外にも着床前診断で防げるもの、防げないものがあります。なぜこうした違いが現れるのでしょうか。
かつては「育て方に原因がある」とも言われてきた発達障害ですが、最近では遺伝の関与が明らかになっています。たとえば親がADHDの場合、子どもに遺伝する確率はおよそ50~80%です。
遺伝するということは、着床前診断の遺伝子検査で調べることができるように思われます。
ですが、発達障害の遺伝子構造ははっきりしたことが分かっていません。
ドーパミンやセロトニン受容体に関わる遺伝子が関与していると考えられていますが、未解明な部分が多いのです。また、ADHDやASDは本人の特性と周囲との差が問題視されます。
ということは、子どもの特性を受け入れられるような環境下であればとくに問題にならないのです。
自閉症はどうでしょうか。
自閉症は遺伝的要因が大きく、環境要因が低いとされています。ただし、自閉症はさまざまな遺伝子が絡み合う「多因子疾患」である可能性が高いのです。
多因子疾患とは、複数の遺伝子条件が絡み合った病気のことです。遺伝子条件のほかに、周産状況や環境などの条件も加わります。具体的な疾患例を見ていきましょう。
(多因子疾患の例)
・自閉症
・発達障害
・冠動脈疾患
・口蓋裂などの先天奇形
・糖尿病
・本態性高血圧
・心筋梗塞
・アルツハイマー病
・統合失調症
・悪性腫瘍(一部のがんを除く) など
一般的な疾患のほとんどは、多因子疾患といわれています。多因子疾患の患者数は実に多いため、遺伝子レベルで防ぐことができればと考える方もいらっしゃるでしょう。ですが、着床前診断で多因子疾患を調べることは現実的に不可能とされています。
着床前診断をおこなう目的は2つに分かれます。ひとつは染色体異常のない受精卵によって着床率を上げ流産を防ぐこと、もうひとつはご夫婦にある遺伝子疾患のない受精卵で妊娠することです。後者の着床前診断はPGT-M、別名で着床前単一遺伝子疾患検査と呼ばれています。
その名の通り、PGT-Mで調べられるのは単一遺伝子疾患です。単一遺伝子疾患とは、ひとつの遺伝子異常に起因する疾患です。単一遺伝子疾患は「遺伝子のうちこの一か所に問題がある」と分かっているため、着床前診断で調べることが可能です。ですが、多因子遺伝子の場合は複数の遺伝子や環境などさまざまな条件が重なって発現します。そのため多因子疾患を着床前診断の段階で調べ上げることは、現代医学では非常に困難なのです。
出生した全ての赤ちゃんのうち、およそ4%前後が先天性疾患(生まれつきの病気)をもって生まれてくるといわれています。そのうち、染色体異常はおよそ25%、単一遺伝子疾患の割合はおよそ20%です。もっとも多いのは多因子疾患で、その割合はおよそ50%とされています。また、まったく遺伝に関係のない環境要因も5%ほど含まれます。
つまり、着床前診断で防げる病気は限られているのです。ただし、着床前診断で大きなメリットを得られるケースも存在します。
では、着床前診断のメリットが大きいのはどんなケースなのでしょうか。まずは着床前診断で防げる可能性のある疾患を解説していきましょう。前項でも述べたように、着床前診断で予防できるのは単一遺伝子疾患です。
(単一遺伝子疾患の例)
・筋ジストロフィー(デュシェンヌ型)
・副腎皮質ジストロフィー
・筋萎縮性側索硬化症
・先天性筋緊張性痙攣
・パーキンソン病
・小脳性運動失調
・点状軟骨異形成症
・血友病
・腎結石症 など
単一遺伝子疾患には比較的早期に発症するものもあれば、筋ジストロフィーのように40歳以降になって発症するものもあります。
単一遺伝子疾患は患者数こそ少ないものの、発症すれば治療が難しいという傾向があります。そのため上記のような単一遺伝子疾患をご心配されるご夫婦にとっては、着床前診断は大きなメリットがあるといえます。
ここで注意したいのが、単一遺伝子疾患でも防げないケースがあるということです。着床前診断で異常を見つけるためには、まずその疾患の遺伝子情報が解明されている必要があります。
また、着床前診断を受けるご夫婦が遺伝病を有することを知っていなくてはなりません。着床前診断では単一遺伝子疾患を総ざらいで調べるのではなく、遺伝する可能性の高い疾患をピンポイントで調べるからです。
また単一遺伝子疾患できちんと解明されている疾患でも、100%防ぐことはできません。着床前診断では受精卵の中の数個細胞からDNAを採取し、培養して検査をおこないます。採取できる遺伝子の情報が少ないため、検査結果で正常でも実際に生まれてきた赤ちゃんが疾患をもっていることもありえます。着床前診断を受けるには、こうしたデメリットも含めて検討する必要があるでしょう。
着床前診断における日本の現状にも触れておきましょう。日本で着床前診断を受けるには、日本産科婦人科学会の承認を受ける必要があります。日本産科婦人科学会で承認されている疾患には制限があり、前項で挙げた単一遺伝子疾患の中でも日本で認められているのは少数です。この制限は徐々に緩和されつつありますが、そもそも日本では着床前診断を受ける条件が厳しく、非常に敷居の高いものとなっています。
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日本における着床前診断は制約が多く、ほかにも男女産み分けを目的とする着床前診断は認められていません。そのため海外で着床前診断を受けるご夫婦も多いのですが、高額な医療費に加えて渡航費が上乗せされること、海外で医療行為を受けることへの不安などさまざまな問題が生じます。
株式会社B&C Healthcareが提供する着床前診断は、これらの諸問題をクリアする新しいプログラムです。B&C Healthcareでは日本国内で受精卵をつくり、信頼と実績のある米国検査機関にて着床前診断をおこないます。
日本国内で認められていない単一遺伝子疾患や男女産み分けにも対応しており、承認を受ける必要がありません。検査後の胚は日本国内の連携医療機関にて移植されるため、安心して施術を受けられるメリットがあります。
着床前診断だけでは分からない病気があります。ですが、遺伝病で赤ちゃんを諦めていたご夫婦にとって着床前診断はひとつの希望です。「疾患の可能性をすべて潰したいから着床前診断を受ける」というのは現実的ではありませんが、「ご自身が苦しんできた遺伝病を次世代に伝えたくない」というケースでは着床前診断のメリットは大きいといえるでしょう。
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