「漢方薬で不妊が改善する」という話を聞いたことはありますか?今、漢方で根本から体質を改善し、妊娠しやすい身体づくりを目指す方が増えています。
漢方はどのようにして不妊に働きかけるのでしょうか?また、服用するとしたらどんな漢方薬を選べばよいのでしょうか?
今回は、漢方の基礎的な考え方や不妊に用いられる漢方薬の種類、漢方薬にかかる費用の目安についてご紹介します。
漢方は一般的な病気だけでなく不妊にも効果が認められており、不妊専門クリニックでも広く処方されています。
とはいえ漢方は非常に種類が多く、「自分にどんな漢方が合うのかよく分からない」という方もいらっしゃるでしょう。
ここでは漢方の基本的な考え方やホルモン補充療法との違いについて解説します。
漢方では、一人ひとりの体質をとくに重視します。漢方でいう体質は、大きく二つに分けることができます。
ひとつは「虚証(きょしょう)」です。華奢な体格で疲れやすく、胃腸が弱くてどちらかというと下痢になりやすいのが特徴です。
もうひとつは「実証(じっしょう)」です。がっしりした体格で体力があり、胃腸は強くどちらかというと便秘になりやすいのが特徴です。
「自分はどちらの体質なのかよく分からない」というときは、漢方のセルフチェックできるサイトを利用すると簡単に確認できます。
漢方では、身体の不調を「気・血・水」の3つで表現します。
気(き)は、目には見えない生命エネルギーのことです。いわゆる元気の「気」、気力の「気」にあたり、西洋医学でいうところの自律神経の働きに近いとされています。不調の例は、無気力、だるさ、食欲不振、頭重、気うつ、不安などです。
血(けつ)は、その字の示す通り、全身を巡る血液のはたらきを表します。血液の流れが悪くなると血の不調を起こすと考えられています。不調の例は、月経異常、便秘、色素沈着、血行不良、皮膚の乾燥などです。
水(すい)は、血液以外の体液循環を示しています。西洋医学でいうと、水分代謝や免疫システムに該当します。不調の例は、むくみ、頭痛、めまい、下痢、排尿障害などです。
東洋医学では「虚証・実証」と「気・血・水」を総合的に判断して、それぞれの体質や症状に合う漢方薬を処方します。
不妊という状態に対して、西洋医学ではホルモン補充療法などの薬剤を、東洋医学では漢方薬を使ってアプローチします。
ホルモン補充療法は即効性があり、目に見えて効果が現れやすいのが特徴です。効きがよい反面、頭痛や吐き気、卵巣過剰刺激症候群などの副作用が現れることがあります。
一方、漢方は効き方がマイルドです。即効性には欠けますが、体質を根本から整えてくれる作用があります。ターゲットとなる症状だけでなく、さまざまな体調不良に効果を示すこと、副作用が少ないことがメリットです。
西洋医学も東洋医学もそれぞれ違った良さがあるため、必要に応じて使い分ける、もしくは併用するのがおすすめです。
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では、不妊治療では実際にどのような漢方が使われているのでしょうか。代表的なものを見ていきましょう。
月経痛、月経不順で使われる漢方薬です。血の不調を改善する働きがあり、ホルモンバランスを整えて身体を温めます。
産前産後、あるいは流産後の貧血や疲労、めまいといった症状を和らげてくれるほか、むくみを改善する効果もあります。華奢で体力のない「虚証」の方に適した漢方です。
血の不足によって気が余ってしまい、気が熱に変わってしまっている症状を改善する漢方薬です。
具体的には、月経前症候群(PMS)などのホルモンバランスの乱れによるイライラを改善します。自律神経を整え、血行をよくする働きがあります。
血の流れが滞ると、顔はほてっているのに足は冷えるという症状が現れやすくなります。
これを改善するのが桂枝茯苓丸で、血の不調を改善して生理不順を改善する効果があります。体格がよく体力のある「実証」の方に適した漢方です。
ホルモンバランスを整え、身体を温める漢方薬です。血の不調を改善する働きがあります。
乾燥した肌を潤してくれる効果があるため、飲み始めてから肌や髪のつやが良くなったと感じる方もいます。
免疫異常による着床障害に効果があるとされています。水の循環をよくして過剰な水分を取り除くため、むくみやすい体質にも効果的です。
また、柴苓湯が多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)による排卵障害に効果を示したという報告もあります。
虚弱で体力が落ちた方の気を改善するために用いられる漢方薬です。
男性不妊に効果があるとされ、服用すると精子の運動率が高まるといわれています。
じっくりと身体の内側から体質改善していきたいときは、漢方薬を使うのがおすすめです。
実際に使うには、どこで入手してどのように服用すればよいのでしょうか?ここからは、漢方薬の具体的な使い方について解説します。
不妊を改善する漢方薬は、かかりつけのクリニックや漢方薬局で手に入れることができますが、市販でも購入することができます。
ただし、体質や症状に合わない漢方薬を使うとかえって逆効果になることもあります。市販の漢方薬を購入するときは、事前に医師や薬剤師に相談しましょう。
また、市販の漢方薬はクリニックなどでもらう漢方薬に比べて50~80%ほどの成分しか含まれていません。大多数の方が飲んでも副作用を起こさないようにするための措置です。
同じ名前の漢方でも、入手先によって成分量に違いがあるので注意しましょう。
不妊治療のクリニックで漢方薬を処方してもらう場合、保険適用されるケースと全額自費で払うケースがあります。
保険適用の漢方はなんといっても価格が安いことがメリットです。しかし、使える生薬には制限があり、人によっては漢方薬の効果や飲みづらさに影響することがあります。
全額自費となる漢方は、個々に合ったベストな生薬を調合できることがメリットです。しかし、費用がかさむため、長期にわたって飲み続けると経済的な負担になります。
一か月あたりの漢方薬の費用目安は、保険適用の場合で数千円、自費診療の場合で2~4万円です。ただし、処方される漢方の種類や量によって価格は変動します。
漢方薬は、食前または食間(食事と食事の間)に服用するのが基本です。空腹時に飲むことで薬効成分が速やかに吸収され、効果を発揮しやすくなります。
漢方薬を飲むときは白湯か水を用意しましょう。濃度の濃いお茶やジュース、牛乳、アルカリイオン水などで飲むと、薬の効き目に影響することがあるので注意が必要です。
また、西洋医学の薬より少ないとはいえ、漢方薬にも副作用はあります。もし身体に異変を感じたときは、早めに医師または薬剤師に相談しましょう。
不妊の漢方薬を検討している方が一番気になることといえば「漢方で妊娠できるようになるのかどうか」ということではないでしょうか。
結論からいうと、漢方で妊娠できるようになるケースもあれば、そうでないケースもあります。
たとえば生理不順やホルモンバランスの乱れが不妊の原因という方は、漢方薬で体質が改善し、妊娠しやすくなる可能性があります。
ですが加齢によって卵子の質が低下してしまっている場合、質そのものを改善する治療法というのは、西洋医学も東洋医学も含めていまだに存在しません。
卵子の質が低下していると、具体的にどんな影響があるのでしょうか。
質の低下した卵子が精子と結びついて受精卵になると、染色体のエラーが生じやすくなります。染色体にエラーがあると、子宮に着床することができません。仮に着床したとしても、妊娠初期のうちに流産してしまいます。
以上が卵子の質の低下による影響です。また、卵子だけでなく精子の質が染色体異常に影響することもあります。
受精卵の染色体異常は、現代医学では治療することが不可能です。回避するとすれば、見分けるしか方法がありません。その方法が「着床前診断」と呼ばれる検査です。
着床前診断では、体外受精によって得た受精卵の一部を採取し、染色体にエラーがないかどうかを調べます。染色体にエラーのない胚を子宮に移植すれば、着床率の向上や流産率の低下が期待できます。
長らく不育症や体外受精不成功に悩んできたご夫婦にとっては、着床前診断がひとつの希望の光となっているのです。
漢方は、西洋医学のような即効性はありませんが、効き目がやさしく副作用が少ないことが魅力です。身体の内側から体質改善していくことで、不妊だけではなく、むくみやだるさといった不快な症状も同時に和らげてくれます。
漢方の体質改善で妊娠が難しいときは、着床前診断で道が拓けるかもしれません。着床前診断についてさらに知りたい方には、株式会社B&C Healthcareから詳しい資料をご提供できるので、お気軽にお問い合わせください。