婦人科の定期検診で「子宮内膜ポリープの疑いがあります」と告げられて、ドキッとしたことはありませんか?
子宮内膜ポリープは過多月経や不正出血、貧血などの症状をともなうことがあり、見つけた場合は適切な対処が必要になります。
治療をする場合、どのような方法があるのでしょうか?また、子宮内膜ポリープによって妊娠しづらくなることはあるのでしょうか?
今回は子宮内膜ポリープの原因や症状、治療のメリットなどについて具体的に解説します。
子宮ポリープとは、子宮粘膜にできるキノコ状のイボのようなものをいいます。子宮ポリープは発生した場所によって2種類に分けることができます。
ひとつは子宮の出口にできる「子宮頸管ポリープ」です。3mm~1cm程度の大きさで、ピンセットのような器具を使って除去できます。
もうひとつは子宮の内腔にできる「子宮内膜ポリープ」です。子宮内膜が異常増殖したもので、通常はおよそ数mm~3cm程度のサイズですが、中には10cm程度に達する大きなものもあります。
子宮内膜ポリープはほとんどが良性ですが、まれに悪性のものもあるため、無症状でも大きさによっては摘出するのが望ましいとされています。
子宮内膜ポリープの原因は明らかになっていませんが、過去の分娩や流産、炎症が影響している可能性が考えられます。
また、女性ホルモン(エストロゲン)も子宮内膜ポリープに影響します。エストロゲンが高い場合、子宮内膜ポリープのリスクが高くなります。正常な子宮内膜組織と同じように、子宮内膜ポリープもエストロゲンによって大きくなるのです。
乳がんの治療としてエストロゲン様の作用を示す「タモキシフェン」を内服している閉経女性の場合、8~36%の割合で子宮内膜ポリープを発症するといわれています。
切除した子宮内膜ポリープを病理検査すると、まれに悪性と診断されることがあります。
子宮内膜ポリープが18mm以上あるもの、不正出血をともなうものの場合は悪性のリスクが高いとされています。
また、閉経した女性の子宮内膜ポリープはそうでない女性と比べて悪性リスクが約3倍高く、タモキシフェンを内服している場合は3~11%の確率で悪性であるという報告もあり、状況に応じて適切に処置する必要があります。
子宮内膜ポリープは、性成熟期から閉経前後で見つかる病気です。とくに40~50代で多いといわれますが、20~30代で発症することもあります。
若い方の場合、不妊検査を受けたときなどに偶然見つかるケースもあるようです。
子宮内膜ポリープは無症状であることが多いのですが、過多月経や過長月経、不正出血などの症状をともなうこともあります。出血がひどくなるあまり、高度の貧血につながるケースもなくはありません。
無症状でも、妊娠を希望している場合は切除を検討します。ポリープの場所によっては受精卵の着床を邪魔してしまい、不妊の原因になることがあるからです。
子宮内膜ポリープ以外に問題が認められない不妊症では、切除をすることで妊娠率が改善に向かうとされています。とくに子宮と卵管の接続部にあるポリープでは切除が有効とされており、除去後の妊娠率は約57%です。
10mm未満のごく小さな子宮内膜ポリープは、自然に消失していくケースもあるようです。
子宮内膜ポリープの大きさが10mm以上になると、自然にとれることはまずありません。子宮内膜ポリープは大きくなるほどがん化のリスクが高まるため、放置はせず、適切な治療を受けるようにしましょう。
子宮内膜ポリープの治療は、大きく分けて薬物療法と手術の二つです。
ホルモン剤を投与して出血を起こし、子宮内膜ポリープをはがし落とす治療法です。手術をしなくて済むのがメリットですが、完全にはがし落とせるかどうかは確実ではありません。
現在は薬物療法よりも、手術による切除が主流となっています。
子宮内膜ポリープの切除では、子宮鏡という細い内視鏡を使います。子宮鏡で子宮内部をモニター観察しながら、ポリープを焼き切る方法が一般的です。手術をする際は、全身麻酔または局所麻酔を使用します。
子宮鏡は子宮の入口から挿入するため、お腹に傷ができることはなく、体への負担も少ないことがメリットです。
子宮内膜ポリープの手術にかかる費用は、保険適用(3割負担)でおよそ5~10万円前後となることが多いようです。
日帰りで済むケースもあれば、2泊ほど入院が必要になることもあります。一般的に入院日数が長くなるほど費用は高くなる傾向です。
ポリープが大きい場合、数回に分けて手術をおこなうこともあります。
手術をして帰宅したあとは、2~3日ほど自宅で安静に過ごしましょう。体に強い負担がかかる仕事でなければ、体調を見ながら復帰が可能です。
軽い家事やデスクワークであれば翌日からおこなうこともできますが、少しでも異変を感じたら無理をせず、ゆっくり休むようにしましょう。
子宮内膜ポリープの手術後は、外来受診で経過を観察します。その際に医師の許可が下りるまでは、性行為は控えるようにしましょう。
入浴も感染の原因となるので、一週間ほどはシャワーで済ませるのが無難です。
子宮内膜ポリープを切除しても妊娠しない場合、ほかの原因が関与している可能性があります。
とくに年齢が35歳以上の場合は、受精卵の染色体異常によって妊娠が妨げられているかもしれません。
受精卵の染色体異常とは、卵子や精子の質の低下などが原因で引き起こされるエラーです。染色体に異常がある場合、そのほとんどは妊娠に結びつかず、万が一妊娠しても流産に至るケースが多くなります。
受精卵の染色体異常は若いカップルでも起こりますが、加齢にしたがって染色体異常の割合が増えるため、年齢が増すほど妊娠率は低下し、流産率は上昇します。
受精卵の染色体異常が妊娠の妨げとなっている場合、対処法はあるのでしょうか。現在、染色体異常を見分ける上で有効とされているのは「着床前診断」という方法です。
着床前診断は、体外受精で得た受精卵の一部を採取して染色体を直接調べる方法です。着床前診断は妊娠する前に検査をおこなうことができるので、流産リスクを減らすことにつながり、妊娠率の向上が期待できます。
「体外受精でもなかなか妊娠しない」「妊娠はするのに流産を繰り返してしまう」というケースでは、着床前診断が次のステップにつながる手立てになるかもしれません。
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子宮内膜ポリープは不妊の原因になることがあります。もし検査で見つかった場合は、医師と相談しながら適切に治療をすすめていきましょう。
「ずっと妊活しているのに妊娠しない」「流産や体外受精不成功を繰り返している」という場合は、着床前診断がお役に立てるかもしれません。着床前診断の詳しい内容については株式会社B&C Healthcareの資料でご確認いただけるので、興味のある方は取り寄せてみてはいかがでしょうか。