20~30代でかかる子宮頸がんは、幼い子どもを残して母親が亡くなるケースがあることから「マザーキラー」とも呼ばれています。
恐ろしい名前をもつ子宮頸がんですが、ワクチンや定期検診で適切に対応すれば発症や重症化を防ぐことができます。
今回は子宮頸がんの原因や検査、治療方法、ワクチンに関する疑問について解説していきます。
赤ちゃんを育む子宮のうち、袋状になっている部分を子宮体部、子宮の入口を子宮頸部と呼びます。子宮頸がんとは、子宮頸部の粘膜にできるがんのことです。
子宮がんには子宮体がんと子宮頸がんがありますが、子宮頸がんが約7割を占めます。もともと子宮頸がんは40~50代で発症することが多かったのですが、現在は若い方にも見られるようになり、発症のピークも30代後半に移行しています。
子宮頸がんと診断される女性は毎年1万人ほどです。割合でいうと、76人に1人の女性が子宮頸がんと告げられています。
初期の子宮頸がんでは、自覚症状はほとんどありません。子宮頸がんが進行すると、次のような症状が現れます。
・性行為後に出血する
・生理ではないのに出血する
・おりものがいつもと違う
おりものの例としては、茶色いおりもの、においのするおりもの、水っぽいおりものなどがあります。さらに進行して子宮頸がんが広がると、多量の出血、お腹や腰の痛み、脚のむくみなどといった症状が現れることもあります。
子宮頸がんの原因として考えられているのは、HPV(ヒトパピローマウイルス)の持続的な感染です。
HPVは男性も女性も感染するありふれたウィルスで、感染経路は主に性交渉です。性交渉の経験がある女性のうち、50~80%がHPVに感染するといわれています。
HPVに感染しても多くは自然に治癒しますが、一部の人は治らないまま持続的な感染を起こし、やがて前がん状態(異形成)を経て子宮頸がんへと進行します。
その場合にHPV感染から子宮頸がんに至るまでの期間は、数年~数十年です。
子宮頸がんを予防するにはどうしたらよいのでしょうか。方法は検診とワクチンの2つです。
子宮頸がんは、がんの前の段階である状態を経て進行します。子宮がん検診を定期的に受けることで、前がん状態の組織を発見し、進行を予防することができます。
20歳以上の女性の場合、検診を受ける頻度の目安は2年に1回です。自分で子宮頸部の細胞を採取する検査キットもありますが、がんを見逃すリスクがあるため、クリニックで検査を受けるのが望ましいでしょう。
検査では、問診や視診、内診のほかに細胞診を行います。細胞診は、子宮頸部からヘラなどの器具を使って細胞をこすり取る検査です。
採取した細胞は検査機関へと送られ、顕微鏡で異常がないか観察します。もし異常が見つかった場合は、HPV感染の有無を調べる検査、子宮頸部を拡大して観察するコルポスコープ、病変部分の組織を採取する組織診などがおこなわれ、病気の状態や段階を確認します。
子宮頸がんを予防するには、HPVワクチンの接種が有効です。HPVワクチンには感染予防効果はありますが、すでに感染している細胞からHPVを排除する効果はありません。したがって、性交渉を経験する前にHPVワクチンを接種することが重要となります。
小学校6年から高校1年に該当する女子を対象にHPVワクチン接種がおこなわれていますが、過去に接種できなかった方に向けたキャッチアップ接種(平成9年度生まれ~平成18年度生まれが対象)も実施されているので、当てはまる方はチェックしてみましょう。
HPVワクチンを接種すると、約8割が注射部位の一時的な痛みや腫れを生じます。また、注射への不安から失神を起こしたケースが報告されていますが、接種後30分ほど安静に過ごすことでカバーすることができます。
一時期報道された運動機能障害や慢性の痛みについては、HPVワクチンとの因果関係は証明されませんでした。HPVワクチンの臨床研究に関するコクランレビューでも、接種によって局所性の反応はあるものの、全身に及ぶ反応や重い副作用が増加することはないとしています。
子宮頸がんはⅠ~Ⅳまでのステージや組織型によって分類されます。これらの分類と本人の希望や生活環境などを総合的に判断し、治療方針が決まります。
子宮頸がんの治療は手術が基本で、症例に応じて放射線治療や薬物療法を行います。
病変部分を切除する治療方法です。がんの進行や広がり方によって、一部を切除するか子宮全体を摘出するかどうかの判断が変わります。
前がん病変やごく初期のがんであれば、子宮の一部を切り取る円錐切除術が用いられます。子宮を温存するので、妊娠の可能性を残すことができます。
さらに進行したがんでは子宮全摘手術が用いられます。全摘手術を受けた場合、その後の妊娠はできなくなります。
X線やガンマ線などの放射線をがんに照射する治療方法です。子宮がんの場合、骨盤の外側から照射する外部照射、子宮や膣に放射線を出す器具を入れる腔内照射、がん組織に放射線を出す物質を挿入する組織内照射があります。
放射線治療によって卵巣や子宮が影響を受けると、妊娠が難しくなることがあります。
薬物療法は、遠隔転移したがんや再発したがんの治療を主としています。
薬物にはいくつか種類があり、がん細胞増殖を防ぐ細胞障害性抗がん薬、増殖に関わるタンパク質を標的とした分子標的薬などがあります。
薬物によっては卵巣や卵子に大きく影響し、その後の妊娠が難しくなるものもあります。
子宮頸がんの治療後に妊娠できるかどうかは、がんの進行度合に強く関係します。
進行した子宮頸がんの場合、子宮全摘手術や放射線治療を行う必要があるため、その後の妊娠や出産は困難になります。
前がん病変や初期のがんであれば、子宮を温存する円錐切除術での治療が可能となるため、妊娠できる可能性が残ります。
がんの発見が早いほど妊娠への影響は少なくなるので、HPVワクチンを接種した方も含めて定期的に検査を受けるようにしましょう。
子宮頸がんやその他の病気がなく、不妊検査でも異常がないのに、なぜか妊娠しないということがあります。
原因不明の不妊にはさまざまな理由がありますが、大きな要因として挙げられるのが「加齢の影響」です。女性は35歳を過ぎるあたりから、卵子の質の低下によって妊娠率が低下します。質の低下した卵子から発生した受精卵は、着床や妊娠を維持するだけの力がなく、その多くが出産に至る前に淘汰されてしまうのです。
卵子の質を元に戻す方法は確立されていないため、基本的には年齢が増すほど妊娠や出産が難しくなります。
なかなか妊娠しないときの打開策としては、着床前診断という方法があります。着床前診断とは、受精卵の一部を採取して染色体検査を行う検査です。
受精卵の染色体を調べることで、妊娠を継続する力があるかどうかを判断することができます。着床前診断で妊娠率や流産率の改善が見込めるため、不妊に悩むご夫婦の間でも注目されている検査です。
日本国内のクリニックで着床前診断を受けるには申請や承認が必要ですが、海外で検査を受ける場合はこの限りではありません。
受精卵の一部をアメリカ検査機関へ凍結輸送するという方法もあり、この方法であればご夫婦は日本にいながらにして着床前診断を受けることができます。
こちらもおすすめ
【医師監修】日本にいながら世界基準の着床前診断が受けられる「B&C Healthcare着床前診断プログラム」とは?
子宮頸がんは、定期的な検診やワクチンによって予防することができます。また、前がん病変や初期のがんであれば、妊娠の可能性を残しながら治療することが可能です。
病気ではないのに妊娠しない場合、加齢の影響も考えられます。加齢で問題となる染色体異常には着床前診断で対応することができます。
着床前診断エージェントである株式会社B&C Healthcareでは、着床前診断に関する詳しい資料を配布しています。妊娠の兆しが見られず悩んでいるご夫婦はぜひご利用ください。