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【医師監修】排卵誘発の低刺激と高刺激の違いとは?メリットデメリットもご紹介!

2021.10.31

排卵誘発とは単一の方法ではなく、低刺激と高刺激という違いがあります。それぞれがどのような手法でおこなうのか、また、それぞれも施術のメリットとデメリットも併せて、詳しくご紹介します。

排卵誘発をこれから治療に取り入れようと考える方の参考になれば幸いです。

排卵誘発とはどんな治療?

まずは、排卵誘発がどのような治療なのか、そのメカニズムも併せて解説していきます。

排卵誘発とは何か、そのメカニズムは?

排卵誘発とは卵巣刺激とも呼ばれ、お薬を使って卵巣を刺激し、排卵を誘発させる治療のことを言います。

そもそも1度の月経周期に対して1つの卵子しか排卵されません。ですが、卵胞では排卵される1つの卵子以外にも多くの卵子が発育をしています。排卵させるのはいくつか育っている卵子のうち、成長が良かったもの1つで、それ以外の卵子は通常、体内へ吸収されてしまいます。この本来であれば吸収されてしまう成長が不良だった卵子も薬の力で卵巣を刺激して育て、排卵を促すのが排卵誘発という治療のメカニズムとなります。

この治療をして必ずしも排卵するとは言い切れませんが、タイミング法や人工授精などの治療をして妊娠率を高めるために適した医療といえます。

あるいは体外受精などの生殖補助医療の際には、卵子をより多く作り、より多くの受精卵を作るためにもおこなわれます。

排卵誘発ができるのはどんな人?

排卵誘発の治療の対象となる方については明確にこんな人!という決まりはありません。

ただ、排卵誘発治療を勧められる方としては

・何らかの理由で排卵障害があるという診断がついている方

・体外受精など生殖医療を受けられる

としています。

また、排卵が現時点であるという方であってもさらに多くの卵子を排卵させ、自然妊娠を成功させるためのステップアップの1つとして勧められることもあります。

 

排卵誘発をすることのメリットとデメリットは?

排卵誘発をすることのメリットは、卵子がたくさん育ち、多くの卵子が排卵されるということです。多くの卵子が排卵されればそれだけ受精卵ができる確率が上がり、妊娠できる確率も上がります。治療法にもよりますが低刺激な治療であっても、排卵障害のない方におこなうことで妊娠率が6%上がるということも分かっています。少しでも妊娠率を高めたいと考える方にはお勧めの治療法であるといえます。

 

一方で、デメリットは2つあります。

1つは、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)となるリスクが生じるということ。卵巣過剰刺激症候群(OHSS)とは、排卵誘発剤によって卵巣が過剰に刺激されることによって卵巣が腫大し、腹水が貯まることにより腹部膨満感、体重増加、腹囲増加などの症状が認められるものです。

 

また、腹部膨満に伴い、腹膜が刺激されるので下腹部痛や悪心、嘔吐が起こります。ほかにものどの渇きや尿量の減少といった症状が見られます。治療技術の向上により起こる確率は、排卵誘発をした患者さん全体の5%程度といわれているものの、使用した薬剤の種類や元々の卵巣の状態に加え、若い方や痩せている方はリスクがあるといわれています。

 

もう1つは多胎妊娠の可能性が上がるということです。

たくさんの受精卵ができあがるため、それらが着床してしまうと双子や三つ子といったリスクが高まります。

子どもが欲しくてもできない方にとって一度に何人もの子供ができることは喜ばしい一方で、妊娠中のリスクは高く、早産のリスクも高まります。周産期のいずれかに母子ともに危険な状態になるというリスクは単体妊娠の方よりも高くなるということは、考慮しておくべきことです。

 

低刺激法のメリットデメリットは?

排卵誘発法の1つとしてまずおこなわれる低刺激法とはどんな方法なのか、また、低刺激法にどのようなメリットやデメリットがあるのかをご紹介します。

 

低刺激法とはどんな治療法?

低刺激法とは言葉の通り、卵巣への刺激を少なくして排卵を誘発させるという方法です。

低刺激法では飲み薬が基本であり、注射薬については使用しても連日ではなく隔日投与という場合が多いです。使えるお薬のバリエーションが多いため自分に合ったお薬を使えるのが特徴です。

ホルモン値を細かく観察することが必要となるため、病院へ行く回数が多くなります。

低刺激法ではどんなお薬を使うの?

低刺激法に使われるお薬はクロミッド(成分名クロフェミン)が多く用いられます。このお薬は1961年に開発されて日本では1968年より使用されている、安全性が最も高いお薬といわれているものです。脳の下垂体に作用して卵巣を刺激するという仕組みのため副作用もかなり少ないです。生理開始後5日目より服用を開始しその状況によって量を増減させて様子を見ていきます。

排卵障害のみの患者さんにクロミッドで排卵を誘発した場合、6か月の累計妊娠率は60~75%に達するとされており、低刺激でありながらも十分な効果は期待できるとしています。

このほかにも、卵胞の成長度合いに合わせて、hCG製剤という注射薬やGnRHアゴニスト製剤という点鼻薬を使って排卵を促していきます。

 

低刺激法のメリットとデメリットは?

低刺激法をおこなうことのメリットは2つあります。

 

1つは高刺激法に比べて注射をする回数が少ないということです。注射そのものが痛くて苦手という方もいらっしゃるので、身体的、精神的な負担が軽減されるといえるでしょう。また、注射薬は内服薬よりも薬価が高いです。なので、注射の回数が減ることで経済的な負担も軽減させることができます。

 

もう1つは先ほどご紹介している卵巣過剰刺激症候群(OHSS)となるリスクが低くなることです。卵巣への刺激が少ないため、こういった合併症を回避できるというところも特徴です。

自然周期での排卵よりも可能性を上げたいけれど卵巣過剰刺激症候群(OHSS)となるリスクが高いという方には、低刺激法が選択させる傾向にあります。

 

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高刺激法のメリットデメリットとは?

排卵誘発のもう1つの方法、高刺激法のメリットとデメリットについて引き続きご紹介をしていきます。

 

高刺激法とは

高刺激法とは月経時から排卵までの間に毎日お薬を投与して卵巣を刺激し、卵胞を育てていく治療法です。卵巣の状態がいい方や過去に卵巣過剰刺激症候群になったことがない方に使える治療法なので誰でもできるというわけではありません。

 

高刺激法は主に3つの方法があります。

1つ目はロング法といい、高刺激法で最もおこなわれる方法です。卵巣を誘発する前の周期から点鼻薬やピルを活用してホルモンバランスをコントロールし、排卵を誘発する周期に注射薬や排卵を誘発する点鼻薬などを使い集中的に卵胞を育てて排卵をさせていきます。

37歳以下で卵巣機能に問題のない方ができます。この方法が最も排卵を促すことができ妊娠率も高まると考えられています。また、ロング法は採卵日が細かく調整しやすいという利点もあるのです。

 

2つ目はショート法といい、ロング法とやっていることは同じですが、排卵周期の中で都度、薬剤を細かく変えていき、1つの薬剤の長期使用を防いでいく方法です。38歳以上の方もしくは、37歳以下で卵巣機能が低下していてロング法が適応外の方、発育卵胞数が少なく他の方法で妊娠しなかった場合などにおこないます。

ロング法よりも薬剤の使用量を抑えるため、ロング法と比較すれば卵子の数は少なくなりますが、身体的、経済的な負担を回避できます。

 

3つ目はアンタゴニスト法といい、ロング法と同じように医療機関でよくおこなわれる方法です。脳に作用する薬剤を多く使用して卵巣そのものへの直接的な刺激を少なくしながら、卵胞を育てます。

ロング法やショート法ができない方や、卵巣刺激症候群のリスクが高い方におこなわれる治療法です。身体への負担が少ないことが特徴であり、ロング法と同じくらいの排卵数が見込めます。ですが、この治療で使われるアンタゴニストという薬剤は長期的に使うと、子宮内膜の着床環境に対して悪影響を与える可能性が指摘されています。この周期の妊娠が難しくなる可能性があり、主に体外受精の方で使われることが多いです。

 

高刺激法のメリット、デメリット

高刺激法のメリットは、やはりたくさんの卵子が作れるということです。排卵誘発をおこなったときに平均して10個程度の卵子ができることが理想です。

高刺激法をおこなうことで、この平均値よりの多く卵子を作ることができる可能性が高まります。たくさんの卵子が作られることで、凍結保存をすることができるようになるのもメリットです。

また、卵子の数が増えるだけでなく質の良い卵子が作られる可能性も高まるので、妊娠率が高まるということも考えられるのです。

 

デメリットは、薬剤を投与する回数が多く、薬剤の効果が高いぶん、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)となるリスクも高まるということです。状態を軽度で抑えることはできるものの、やはり低刺激法に比べれば、卵巣過剰刺激症候群となる可能性は高いといえます。

また、注射をする回数が増えることの負担です。先ほどもお話ししたように注射を打つことによる痛みへの身体的な負担や精神的な負担、お金もかかるので経済的負担は免れません。

さらに、医療機関によってはお家で自己注射とするところもあれば病院へ来て打たなければならないということもあるので、注射を打つために毎日通院し、通院による負担も増えることが考えられるのです。

 

まとめ

排卵誘発にはいろいろな方法があり、それぞれ、身体面、精神面、経済面のメリットデメリットがあります。

また、状態によって使えない治療もあるため、自分がどの治療をすることができるのか、医師と相談をして治療を決定されると良いでしょう。

 

 

監修

中林 稔 先生
三楽病院 産婦人科部長

日本医科大学卒業。東京大学医学部附属病院で研修後、三井記念病院医長、虎の門病院医長、愛育病院医長を経て、現在三楽病院産婦人科部長。毎日出産や手術に立ち会う傍ら、各地で講演を行い医学的知識や技術の普及に力を入れている。また、少子化及び産婦人科医師不足問題にも積極的に取り組み、教育においても若手医師の育成をはじめ助産師学院の設立等、幅広く活動を行っている。

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