「妊活中だけど、タイミングが取りづらい」
そんな方に活用いただきたいのがシリンジ法です。
シリンジ法はメリットもある一方で、デメリットもあります。また、最近ではシリンジ法をすると胎児が奇形になるという噂もありますが、これは本当なのでしょうか?
シリンジ法とは何かもあわせて詳しくご紹介します。
シリンジ法と胎児奇形が関係しているのかについてご紹介する前に、シリンジ法とは何かについて知っていただく必要があります。
シリンジ法とはどんなものなのかを詳しくご紹介します。
シリンジ法は、20~30代前半の若い世代の方に特に取り入れられている手法で、新しい妊活法の1つとしても話題になっている手法です。スポイト法、セルフシリンジ法などさまざまな呼ばれ方をしますが、概要についてはシリンジ法と同じです。
タイミング法をしたいけれど、性交痛や機能障害があるなど性行為での射精が難しいという方に有効な補助手段として用いられます。
シリンジ法は人工授精と手法が似ているということもあり、気軽にできる人工授精などと呼ばれることもあります。しかし、人工授精では精子を洗浄、濃縮するなどして精子をより受精しやすい状態にしているのですが、シリンジ法は射精した精子をそのまま注入するものです。そのため、タイミング法の一種としてとらえられており、人工授精と同等の効果を得ることはできません。
シリンジ法を行うためにはまず、道具の準備が必要です。シリンジ法を行うためには、精液採取用カップ、シリコンチューブ、注射器を用意します。なお、シリンジ法では注射器の針は使わないため、針は不要です。
まずは、精液を採取して液化します。射精の直前に採精容器を開封して、精液容器の中に射精をします。射精したばかりの精液は粘性が高いため、そのまま使うことができません。
そのため、液状化するまで15分程度常温で放置しておきましょう。
次に、注入の準備をします。手をしっかりと洗ってから注射器にチューブを装着し、液状化した精液を全て吸い上げます。この時に泡が立たないように注意しましょう。
最後に注入です。横になった状態でシリンジをチューブの接続部位まで膣内に挿入し、ゆっくりと精子を注入します。注入後は速やかにシリンジを腟から抜き、そのまま5分ほど腰をあげた状態を保っておきましょう。
精子が5cc以上あると注入後に精子が膣から漏れてくることがありますが、特に問題ないと考えられています。
シリンジ法は誰でもできる方法ではありません。シリンジ法ができるのは、マスターベーションによって精液が採取できて精液所見が正常である夫と、排卵が確認できており卵管が通っている妻です。どちらかに問題がある場合、シリンジ法を行っても妊娠できません。
シリンジ法を行う前に婦人科など医療機関で、条件が整っているかをチェックしてもよいでしょう。
シリンジ法で妊娠すると胎児が奇形になるというような噂があるようですが、実はこれは嘘。
なぜ、シリンジ法で胎児が奇形になるという噂が流れたのか、その真相を検証しました。
前述したように、シリンジ法は自然妊娠と同じ扱いになります。シリンジ法を行った場合でも妊娠率や奇形児が生まれる割合は自然妊娠と同様の割合になるということがわかっています。シリンジ法をしたから胎児奇形が起こったということは考えにくいといわれているのです。
そのため、シリンジ法で出産した子どもに奇形があったという場合でも、それはシリンジ法によるものでは無いと考えられます。
とある会社が行った調査によると、シリンジ法を知っているという人はわずか2割程度。シリンジ法はまだまだ認知度が低い方法であるといえます。認知度が低いため、情報も少ないのが現状です。
なので例えばシリンジ法を行って奇形児を出産したという方が1人いるだけで、シリンジ法=奇形と結びつけてしまうことが考えられます。
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シリンジ法を行うことでどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。シリンジ法によるメリットとデメリットについてお伝えします。
これから、シリンジ法を行ってみようと考えている方はこちらを参考にしてみてください。
シリンジ法を行うことによるメリットは主に3つあります。
1つ目は、性行為による負担が軽減できるという点です。
排卵日の前に性行為をするということに負担を感じる男性も少なくありません。また、排卵日であっても夫や妻双方の仕事が忙しく、体力的に性行為をすることが難しいという場合もあります。忙しくても子作りができ、性行為による体力的あるいは精神的な負担が軽減できるという点が最大のメリットといえます。
2つ目は妊娠の確率を上げられるという点です。
妊活中は、排卵日の前後に1回でも多く性行為をすることで妊娠率を上げられると考えられます。しかし、前述したような理由もあり、性行為を排卵日前後に複数回おこなうことが難しい場合も。シリンジ法と組み合わせることで、性行為の回数を多くしなくても、妊娠率を上げることが可能です。医療機関によっては妊活の方法の1つにシリンジ法を提案することもあります。
3つ目はセックスレスなどトラブルを抱えている人でも妊娠のチャンスが得られるという点です。
子どもが生まれてからセックスレスになり2人目に踏み出せないという方や、挿入はできるが、挿入後に中折れしてしまい射精に至らないという方など、性行為に何かしらのトラブルを抱えている方もいらっしゃいます。このようなお悩みを抱える方でも無理なく、妊活ができるという点もメリットです。
シリンジ法によるデメリットは2つあります。
1つは扱い方を間違えると膣内を傷つける可能性があるという点です。
シリンジ法はタンポンと同じ要領で膣内に挿入するので、タンポンの使用経験者なら何となく要領をつかんでおこなうことができるでしょう。一方でタンポンの使用経験がないと、どのくらい挿入すればいいのか戸惑うこともあります。また、自分では挿入しづらいと夫に挿入してもらううケースもあります。しかし、どのくらい挿入するかを理解し、正しい長さで挿入をしないと膣内が傷つくことも。膣内が傷つくと次に性行為をするときに痛みを感じてしまうこともあります。
もう1つは、男性、女性のどちらかかが不妊であった場合には効果が全くないという点です。器具を使用していますが、要領としては自然妊娠と同じです。なので、男性の精子の運動率が悪かったり奇形があったりする場合、女性の卵管が詰まっていたり、排卵がされていなかったりすれば妊娠を成立させることはできません。
そのため、シリンジ法をする前にまずは医療機関で異常がないかチェックを受けると良いでしょう。
シリンジ法はまだ認知度は低いものの、妊活の有用な方法であるといえます。シリンジ法をしたことによって子どもに奇形が起こるということもなく、自然妊娠と同様の確率で妊娠することが可能といえます。
シリンジ法に用いる器具は、医療機関での販売や通販サイトでも手に入れることができます。正しい方法で使用し、妊活に役立ててみてください。