「バニシングツイン」という言葉をご存じでしょうか。双子の赤ちゃんが身近にいないと耳慣れない言葉かもしれません。
双子の妊娠では決してまれとはいえないバニシングツイン。ですがもし「バニシングツインの可能性があります」と診断を受けたとしたら、その衝撃ははかり知れません。
バニシングツインとは一体何なのでしょうか?詳しい意味や原因、予防する方法があるのかどうかなどを詳しく解説していきます。
バニシングツインは「お腹にいる双子の片方が子宮に吸収されてしまう現象」です。
一見、双子の片方が消失(=バニシング)したように見えることから、バニシングツインと呼ばれるようになりました。
「赤ちゃんが消えてしまう」というとかなり意外に思えますが、なぜバニシングツインが起こってしまうのでしょうか?
双子の片方が消えてしまう原因は「双胎一児死亡」、つまり流産です。
一人の子どもを妊娠している場合は、流産しても赤ちゃんが消えることはありません。亡くなった赤ちゃんは自然に、または人工的に排出されます。
ですが双子の片方が初期のうちに流産すると、子宮に吸収されてエコーで姿が確認できなくなるのです。
「なぜ双子のときだけ吸収されてしまうのか」について、確実なことは分かっていません。
流産する原因は通常の妊娠と同じで、ほとんどが染色体異常とされています。
バニシングツインは妊娠6~7週ごろに起こりやすいといわれています。逆に、妊娠8週以降でバニシングツインになることはほとんどありません。
ただし流産自体は8週を過ぎても起こるリスクがあるため、妊婦健診などによる適切な経過観察が必要です。
バニシングツインでは、とくに処置を受ける必要はありません。
残った赤ちゃんへの影響もほとんどなく、その後は単胎妊娠と同じように経過を観察していきます。
バニシングツインの原因は明らかになっていませんが、その多くが染色体異常によって起こるのではないかと考えられています。
染色体異常は胎児側の問題であるため、妊娠したあとにリスクを減らすことはできません。よって、バニシングツインを防ぐ手だてはないといえます。
バニシングツインを知った上で双子を妊娠すると「もし自分に起こったらどうしよう?」と不安になりますが、予防ができない以上心配しすぎるのはよくありません。
できることは禁煙や禁酒、そして妊婦健診を適切に受けることです。ほかはできることがないと割り切り、ゆったりと過ごすことも肝心です。
双子の全妊娠のうち、バニシングツインが起こる確率はおよそ15%です。
こうして見るとかなり高いように思えます。しかし、単胎妊娠を含む初期流産が約15%であることを考えれば納得のいく数値ともいえるでしょう。
ただし、この確率は確認されたバニシングツインだけの値です。
未確認のもの、つまり初診の段階ですでに消えてしまったバニシングツインを含めれば、実際にはもっと高い確率であることが予想されます。
バニシングツインが起こる確率は、双胎の種類によって異なります。
ここで双胎の種類について説明しましょう。
双子の妊娠は、発達過程によって以下の3つに分けることができます。
・一絨毛膜一羊膜(MM):ひとつの胎盤と羊膜を共有
・一絨毛膜二羊膜(MD):ひとつの胎盤を共有し、別々の羊膜をもつ
・二絨毛膜二羊膜(DD):それぞれ別々の胎盤と羊膜をもつ
絨毛膜というのは、赤ちゃんに栄養を送る胎盤のことだと思ってください。
この中でもっともバニシングツインが起こりやすいのは、一絨毛膜一羊膜(MM)の赤ちゃんです。
MMではひとつの胎盤から2本のへその緒が伸びています。また、同じ部屋(羊膜)の中で2人の赤ちゃんが一緒に過ごしているのです。
ひとつの胎盤を分け合うため「片方の栄養が足りなくなる」ということが起こります。また、赤ちゃんのへその緒が絡まりやすいことも大きなリスクです。
逆に、バニシングツインが起こりにくいのは二絨毛膜二羊膜(DD)の赤ちゃんです。それぞれ独立した胎盤と羊膜をもつのでお互いが干渉しにくく、双胎の中ではリスクが少ないとされています。
双子は一卵性と二卵性に分かれます。一卵性はひとつの受精卵がなんらかの理由で分裂した双子、二卵性は2つの卵子が同時に受精した双子です。
二卵性の場合は、100%がDD双子(それぞれが独立した胎盤と羊膜をもつ双子)になります。
一卵性の場合は、どのタイミングで分裂したかによって双胎の種類が変わります。
受精後3日以内に分裂すればDD双子、4~7日で分裂すればMD双子、8~12日で分裂すればMM双子になることが多いでしょう。
一卵性の双子であっても、DD双子になればバニシングツインのリスクは低くなります。
もしもバニシングツインが起こったとき、消えてしまった赤ちゃんへの悲しみはもちろんのこと、生き残った赤ちゃんに影響があるかどうかは大きな気がかりです。
もう片方の赤ちゃんに深刻な影響を及ぼすことはあるのでしょうか? また、母体への影響はどうなのでしょうか?
結論からいうと、バニシングツインで生き残った赤ちゃんに障害が残ることはまずありません。
妊娠15週以前の流産がもう片方に影響することはあまりなく、経過観察で問題がなければ心配しすぎる必要はないでしょう。
要注意なのはバニシングツインよりも、妊娠15週を過ぎてからの流産です(妊娠15週だと消失はしないので、バニシングツインとは呼びません)。
週数が進んでから流産すると血流が大きく変化し、生き残った赤ちゃんが障害や死亡のリスクにさらされます。とくに胎盤を共有するMM双子やMD双子ではリスクが高く、出産まで慎重な経過観察が必要です。
バニシングツインは、その名の通り赤ちゃんが消失してしまう現象です。子宮に吸収されてしまうので体内に残ることはなく、母体への影響もほぼないと考えられています。
しかし、週数が進んでからの流産では子宮内に亡くなった赤ちゃんが残ります。
赤ちゃんは時間の経過とともに自然排出されることもありますが、母体内に留まりつづけるときは医師と相談しながら適切な処置を受けましょう。
バニシングツインを経験すると、どうしても次の妊娠が不安になってしまうものです。
この不安を少しでも減らす方法はあるのでしょうか?ひとつの手段として考えられるのが「着床前診断」という方法です。
着床前診断は、受精卵に染色体異常がないかを調べるための検査です。染色体異常がない受精卵を子宮に戻すことによって、初期流産のリスクを減らすことができます。
NIPTのような出生前診断と違い、着床前診断は妊娠する前におこなう検査です。子宮に戻すかどうかは検査後に選ぶことができるため、心身の負担を少なくできるメリットがあります。
着床前診断を受けたからといって「100%バニシングツインが起こらない」というわけではありません。ですが着床前診断によって妊娠への恐怖感を少しでも拭うことができるなら、検討する価値は十分にあるのではないでしょうか。
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