日本の産婦人科クリニックでもおこなわれている男女の産み分け。サプリメントやゼリーなどさまざまな方法がありますが、これらは一体どのような仕組みになっているのでしょうか。また、実際に産み分けをした場合の成功率はどの程度なのでしょうか。
今回は代表的な産み分け法をピックアップしつつ、その仕組みと成功率についてご紹介します。
産み分け法のメカニズムを理解するためには、赤ちゃんの性別がどのようにして決まるのかを知っておく必要があります。
性別を決めるのは精子がもつ染色体です。そもそも染色体とは何なのか、染色体がどうやって性別を決定するのかをかいつまんで説明しましょう。
ヒトの細胞の核には染色体という物質があります。この染色体は遺伝子情報をつかさどる部分。どの細胞にも46本の染色体が存在し、その情報をもとに私たちの身体がつくられています。
ですが例外的に通常の半分、23本の染色体しかもたない細胞が存在します。それが女性の卵子、男性の精子です。
卵子と精子が半分ずつしか染色体をもたないのは、お互いが結びつくことを前提としているため。卵子と精子が結びつくことで、23本+23本=46本の染色体が揃います。こうして卵子と精子それぞれの染色体をもとに、赤ちゃんの身体が特徴づけられていくのです。
卵子と精子はそれぞれ23本の染色体がありますが、このうちたった1本だけが性別を決定する情報を含んでいます。その1本が性染色体です。
卵子の性染色体がすべてX染色体なのに対し、精子の性染色体はX染色体とY染色体の2タイプに分かれています。
卵子の染色体 | 精子の染色体 | 染色体の組み合わせ | 赤ちゃんの性別 |
X | X | XX | 女の子 |
X | Y | XY | 男の子 |
上の表のように、X染色体の精子が結びつくと赤ちゃんは女の子、Y染色体の精子が結びつくと男の子になります。
つまり、結びつく精子がどちらの性染色体を有しているかで赤ちゃんの性別が決まるのです。
産み分け法の多くは、X染色体をもつ精子とY染色体をもつ精子の違いを利用したものです。
たとえばX染色体(女の子)の精子は酸性に強く、Y染色体(男の子)の精子はアルカリ性に強いという性質があります。これを利用して膣内環境を酸性に傾ければ女の子が、アルカリ性に傾ければ男の子が産まれやすくなるというわけです。
X染色体とY染色体の違いは、ほかにどのようなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
X染色体をもつ精子には次のような特徴があります。
・重い
・スピードが遅い
・酸性に強い
・寿命が長い(約2~3日)
・数が少ない(Y染色体精子の半分)
女の子になる精子の強みは持久力です。寿命が長いという特徴があり、性交後も2~3日ほど女性の体内で生きのびることができます。
ただし男の子になる精子と比べて約7%ほど重く、動きは遅め。スピード勝負では負けてしまいます。
一方、Y染色体をもつ精子には次のような特徴があります。
・軽い
・スピードが速い
・アルカリ性に強い
・寿命が短い(約1日)
・数が多い(X染色体精子の2倍)
男の子になる精子はスピード型です。女の子になる精子と比べて動きが早いという特徴があります。さらに数も多く、1回の精液に含まれる割合は女の子になる精子の約2倍です。
ですが寿命は短く、性交後1日ほどで死滅してしまいます。男の子になる精子の方が圧倒的に多いのに、産まれてくる赤ちゃんの男女比が1:1になるのはこうした理由からです。
産み分け法は精子の違いを利用していますが、それぞれ少しずつアプローチが異なります。代表的な産み分け法の仕組みをみていきましょう。
タイミング法は、性交のタイミングで男女を産み分ける方法です。女の子を希望するときは排卵日の2日前、男の子を希望するときは排卵日当日に性交をおこないます。
タイミング法はそれぞれの精子の寿命、スピードの違いを利用したものです。
排卵日の数日前に性交すると、寿命の長いX染色体(女の子)の精子が生き残って卵子と結びつきやすくなります。
排卵日に性交すると、数が多くスピードの速いY染色体(男の子)の精子に有利です。
さらに、通常は酸性に保たれている腟内が排卵日はアルカリ性に傾くことも分かっており、タイミング法ではこの点も利用しています。
産み分けゼリーはそれぞれの精子が生きのびやすい環境(酸性・アルカリ性)の違いを利用したものです。
女の子を希望するときは酸性のピンクゼリーを、男の子を希望するときはアルカリ性のグリーンゼリーを膣内に注入して、その後性交をおこないます。
ピンクゼリーを使うと酸性に強いX染色体(女の子)の精子が、グリーンゼリーを使うとアルカリ性に強いY染色体(男の子)が生きのびやすくなる仕組みです。
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【医師監修】産み分けゼリーってどんなもの?成分やリスクを解説します
リンカル錠は、カルシウムや鉄、リンなどを含むサプリメントです。
もともと赤ちゃんの先天性異常を予防するために開発されたサプリメントですが、服用した妊婦の多くが男の子を出産したことから産み分けに活用されるようになりました。
男の子限定の産み分け法ですが、性交する2ヶ月以上前からリンカル錠を毎日服用すると男の子が産まれる確率が上がるようです。
ただし男の子の確率が上がるメカニズムは明らかになっておらず、科学的根拠も乏しいとされています。
産み分けを指導するクリニックでは、タイミング法や産み分けゼリー、リンカル錠を併用した場合の産み分け成功率はおよそ70%程度と謳っているいるクリニックもありますが、実際には50%から60%とも言われており、自然妊娠での男女比率と差があまりないともいわれています。
費用面では大きな負担はありませんが、確実に産み分けたいという場合は少々頼りないと感じる方が多いでしょう。
現状の産み分け法よりも、もっと高い精度で産み分けることはできないのでしょうか。今のところもっとも精度が高いといわれているのは着床前診断です。
着床前診断とは体外受精で得られた受精卵の染色体を検査する方法で、女の子を希望する場合はXXの受精卵を、男の子を希望する場合はXYの受精卵を移植します。着床前診断では99%という高精度の産み分けが可能です。
また、染色体を調べることで一部の先天性異常や流産をある程度予防できることも着床前診断のメリットとなっています。
では、日本の産婦人科クリニックで着床前診断による産み分けをするのは可能なのでしょうか?
結論からいうとクリニック単体では不可能です。着床前診断を実施するには、日本産科婦人科学会の承認を受ける必要があります。ですが日本産科婦人科学会では、倫理上の観点から産み分け目的の着床前診断を認めていません。
日本で着床前診断を受けられるのは、流産やART(体外受精)不成功を繰り返している方、特定の遺伝子疾患をもつ赤ちゃんが産まれる可能性のある方に限られます。
ですが、まったく希望がないわけではありません。たとえばご夫婦で規制のないアメリカへ渡れば、産み分けを目的とした着床前診断を受けることはできます。
ただし渡米する場合は渡航費用が上乗せされて莫大な費用がかかること、仕事の都合で長期休暇を取得できないことなどがネックとなり、実現できないご夫婦が大半でした。
しかし、受精卵だけを凍結輸送でアメリカへ輸送する新しい着床前診断プログラムが存在します。日本のクリニック単体では産み分けは実施できませんが、採卵や採精は日本国内のクリニックでおこない、希望の性別をもつ受精卵を米国研究機関で見分け、日本へ再輸送して胚移植するのです。この方法なら日本にいながらにして高精度の産み分けを実施することができます。
タイミング法やゼリーによる産み分け法は、X染色体をもつ精子とY染色体をもつ精子のわずかな違いを利用したものです。希望する性別の赤ちゃんが産まれる確率は高まりますが、切実に産み分けたい人にとってそれほど精度が高いとはいえません。
海外では99%の精度をもつ着床前診断がおこなわれています。株式会社B&C Healthcareでは日本にいながら行える着床前診断に関する資料を無料で配布しています。詳しく知りたい方は一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。