NIPT(新型出生前診断)は赤ちゃんの染色体異常を調べるための検査です。採血だけで済むため、母体にも赤ちゃんにも負担の少ない検査として知られています。
このNIPTを活用すれば「赤ちゃんの性別」を早く知ることも可能です。今回の記事ではNIPTで分かること、検査できる時期、NIPTの精度などについて解説していきます。
NIPTとは、母体から採取した血液によって赤ちゃんの染色体異常を調べる比較的新しい検査方法です。腹部穿刺をする必要がないので検査による流産リスクがなく、安全性の高い方法として知られています。
NIPTはダウン症の検出において非常に精度が高く、その陽性的中率(検査で陽性となった赤ちゃんが実際にその病気である確率)は97%以上です。
とはいえNIPTはあくまで非確定診断であり、もし「病気の疑いがある」という結果が出た場合は羊水検査などの確定診断が必要になります。
NIPTが受けられる施設には「認可施設」と「認可外施設」があり、どちらを選ぶかによって受けられる検査内容が異なります。
認可施設では、21トリソミー(ダウン症)・18トリソミー・13トリソミーの染色体異常のみ調べることが可能です。
認可外施設では、3つの染色体異常に加えて性染色体の異常、微小欠失の異常について検査できる場合もあります。
認可施設で3つの染色体異常のみに検査を限定している理由は、次のようなものです。
・3つ以外の染色体異常は出産まで至らないので、検査の必要性がない
・3つ以外の染色体異常は検査の見逃しが多い(精度が低い)
NIPTの検査を受けるときは、上記を踏まえた上で施設を選ぶと良いでしょう。
NIPTで必要なのは母体の血液です。母体の血液には胎児由来のDNAが断片的に存在しており、シークエンサー(DNAの塩基配列を読み取る機械)にかけることで分析をおこないます。
トリソミーは、本来2本であるべき染色体が3本存在する染色体異常です。たとえばダウン症は21トリソミーなので、21番目の染色体が3本、つまり通常の1.5倍量含まれていることになります。
お腹の赤ちゃんがダウン症だった場合、シークエンサーによって21番目の染色体が1.5倍量で検出されます。このことから、母体の血液だけでトリソミーの疑いがあるかどうかが分かるのです。
NIPTは妊娠10週以降に受けることができます。ほかの出生前診断と比べ、早い段階で検査できることが特徴です。
また、NIPTは遅くとも妊娠15週までに受けることを推奨しています。万が一、NIPTで陽性だった場合は、妊娠15週以降に羊水検査など確定診断を受ける必要があります。羊水検査は結果が出るまでに時間がかかり、その後の手段が限定されてしまうことから、早めに受けることをおすすめしています。
NIPTに年齢制限はありません。
以前、認可施設におけるNIPTは35歳以上の妊婦のみという年齢制限がありました。2022年春からは撤廃され、認可施設での年齢制限はなくなっています。
ただし、母体の年齢が低いほど偽陽性(赤ちゃんが健康なのに病気と判定される)の確率は高まるため、若い方がNIPTを受けるときは注意が必要です。
NIPTの費用の目安は8~20万円です。自費診療にあたるため、医療機関によって費用に幅があります。
ちなみにNIPTは保険適用外の検査なので、高額医療費制度を利用することはできません。
陽性だった場合の追加検査代や遺伝カウンセリング代を費用内に含むかどうかは、医療機関によって異なります。NIPTを検討するときは金額だけではなく、検査内容もよく比較すると良いでしょう。
NIPTで赤ちゃんの性別を調べることもできます。エコー検査よりも早い段階で判定できることがNIPTのメリットです。ただし、医療機関によっては性別判定をしていないところもあります。
この項では、NIPTで性別を判定する施設とそうでない施設の違い、性別判定の精度などについてお伝えします。
認可施設のNIPTでは性別判定はおこないません。したがって、性別を知りたいと希望しても教えてもらえないでしょう。
一方、認可外施設は希望すれば性別を教えてくれるところがあります。ただし、プランによる違いもあるので性別判定を希望する場合は、事前に医師に相談しておきましょう。
NIPTで性別を判定したものの「生まれてきた赤ちゃんが違う性別だった!」ということはあるのでしょうか。
結論としては、NIPTの結果と実際の性別が異なることはあり得ます。NIPTの性別判定は99%の精度といわれていますが、1%の確率で違う場合もあるのです。
性別が外れる理由として「バニシングツイン」の可能性があります。バニシングツインとは、双子を妊娠していたのにそのうちの一人が消失してしまう現象です。妊娠のごく初期に消えてしまうため、双子であったことすら気づかれないケースもあると考えられています。
バニシングツインが起こっても、しばらくは母体に胎児由来のDNAが残ります。この状態でNIPTをした場合、消失した赤ちゃんの性別を拾ってしまい、異なる性別が判定されることがあるのです。
また、母体の病気や内服薬が検査に影響することもあります。NIPTの性別判定は高い精度ではありますが、絶対ではないということを覚えておきましょう。
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性別を知るためにNIPTを受ける場合のメリット・デメリットについてまとめました。NIPTを検討しているご夫婦はチェックしてみましょう。
NIPTで性別を知るメリットとして、次のようなものがあります。
・早く性別が分かる
・判定の精度が高い
・母体や赤ちゃんへの負担が少ない
通常、妊婦健診でおこなうエコー検査の場合、男の子は妊娠14週以降、女の子は妊娠17週以降にならないと性別の判断は難しいとされています。
NIPTなら妊娠10週から検査できるため、エコー検査よりも早く性別が分かります。結果が出るまでに1~2週間ほどかかりますが、エコー検査よりは約1~2ヶ月ほど早く性別を知ることができます。
検査の精度が高く、血液検査だけで済むこともメリットではないでしょうか。
NIPTで性別を知るデメリットとして、次のようなものがあります。
・検査費用がかかる
・先天性異常が発覚することがある
・希望した性別の赤ちゃんとは限らない
NIPTは自費診療ということもあり、場合によっては20万円以上のまとまった費用がかかります。
また、NIPTを受けて赤ちゃんの染色体異常が発覚することもあります。性別を知ろうとして受けただけなのに、思わぬことになって動揺するケースも少なくありません。
さらにNIPTで判定された性別が希望と異なる性別だった場合、深いショックを受けてしまうこともあります。
NIPTでは知りたくない結果が出ることもあるため、デメリットを考慮した上で受けることが大切です。
NIPTで赤ちゃんの性別を知ることはできますが、中にはどうしても女の子(男の子)が欲しい、産み分けをしたいという人もいるでしょう。
医学的に男女の産み分けをするにはどうしたらよいのでしょうか。現時点で考えられる産み分けの方法について解説します。
一部の産婦人科クリニックでは産み分け指導をおこなっています。具体的には次のような内容が一般的です。
(男の子が欲しいとき)
・排卵日当日にタイミングをとる
・グリーンゼリーを使う
・リンカルサプリメントを利用する
(女の子が欲しいとき)
・排卵日前にタイミングをとる
・ピンクゼリーを使う
上記の方法は、主にY染色体(男の子)とX染色体(女の子)の性質の違いを利用したものです。
産み分けが成功する確率は個人差もありますが、多くは70~80%程度とされています。男女が生まれる確率がもともと50:50であることを考えると、高いと見るか低いと見るかは意見が分かれるところです。
さらに高い確率で産み分ける方法としては、着床前診断が考えられます。
着床前診断とは、体外受精で得た受精卵の染色体を調べる検査です。正常な受精卵が複数個得られれば、その中から希望する性別の赤ちゃんの受精卵を選ぶことができます。
ただし、産み分け目的での着床前診断は日本産科婦人科学会で認められていません。そのため規制のない海外へ渡航して着床前診断を受けるケースもあるようです。
近年では受精卵または受精卵から取り出したDNAだけを海外輸送させる着床前診断プログラムも登場しています。この方法であれば日本にいながらにして着床前診断を受けることが可能です。
産み分けに興味がある方は、着床前診断について詳しく調べてみても良いでしょう。
NIPTは、赤ちゃんに負担をかけることなく染色体異常の有無を調べることができます。NIPTで性別を知ることも可能ですが、思わぬ結果にショックを受けることのないよう検査の性質についてよく知っておくことが大切です。
どうしても男の子または女の子の赤ちゃんが欲しい場合は、クリニックの産み分け指導のほかに海外で着床前診断を受ける方法もあります。受精卵または受精卵のDNA情報だけを海外輸送する方法については株式会社B&C Healthcareより資料請求が可能です。着床前診断について詳しく知りたい方は、今後の参考に取り寄せてみてはいかがでしょうか。