着床すると、だるさや下腹部の痛みなどの体の変化を感じることがあります。これらを妊娠初期症状と呼びますが、そのうちのひとつとされているのが「下痢の症状」です。
着床で下痢が起こるのは一体どうしてなのでしょうか。また下痢の症状が激しいとき、お腹の赤ちゃんに影響することはないのでしょうか。
今回は着床にともなう下痢症状について、受診の目安や対処方法を交えつつ解説します。
全ての妊婦に起こることではありませんが、「着床して下痢になった」という人がいます。着床でなぜ下痢が起こるのでしょうか。
着床して下痢になるのは「妊娠してホルモンバランスが変化する」からです。
着床すると、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが過剰に分泌されます。hCGはエストロゲンやプロゲステロンといったホルモンの分泌を促し、これらのホルモンの変化によって妊娠が維持されます。
ですが、こうしたホルモンの変化やそれに伴う自律神経の乱れで下痢を引き起こすことがあるのです。
誰でも下痢の症状を示すわけではなく、逆に便秘になったり、何も変化がなかったりする人もいます。
着床によって下痢が引き起こされる時期は、前回の生理開始日から数えて26日目ごろです。
おおよそ生理開始日から14日後に排卵が起こり、受精卵は12日間ほどかけて子宮内膜へと潜り込んで着床が成立します。つまり、妊娠3週目ごろに症状が現れます。
前回の生理開始日から数えて26日目ごろというと、ちょうど次の生理が始まるかどうかというタイミングです。通常の生理でも腹痛や下痢などの症状は起こるため、この時点で着床か生理かを見極めるにはもう少し時間が必要でしょう。
万が一着床していたとして、激しい下痢が原因で流産してしまうことはあるのでしょうか。
結論からいうと、下痢だけが原因で流産することはありません。妊娠初期の流産は、そのほとんどが受精卵側の原因によるものです。
ただしあまりに腹痛がひどく、出血をともなっている場合は子宮外妊娠(異所性妊娠)の可能性もあります。子宮外妊娠なら早急な処置が必要なので、あまりに痛む、下痢が続いてなかなか治らないというときは、我慢しすぎず早めにクリニックを受診しましょう。
市販の下痢止めを自己判断で飲むのは控えましょう。妊娠している場合、むやみに市販薬を飲むことは控えたほうがよいからです。
下痢止めを飲まないといけないほど症状がひどいなら、早めに病院を受診しましょう。このとき、妊娠の可能性があることを医師に伝えておくと診断がスムーズでしょう。
着床の可能性があるときは、ほかにも妊娠初期症状が起こっていないか確認しましょう。生理予定日を1週間過ぎれば、市販の妊娠検査薬で調べることができます。
妊娠初期は、次のような症状が起こることがあります。
・おりものに血がにじむ
・おりものが増えて白っぽくなる
・いつもよりだるさを感じる
・通常よりも眠い
・体がむくむ
・頭痛がする
・めまいや立ちくらみ
・微熱がある
・胸が張る
・胃がむかつく、吐き気がする
・下腹部に痛みや張りを感じる
・便秘または下痢
・気持ちが不安定になる
・生理が遅れる
これらの症状がいくつか当てはまるときは、妊娠している可能性があります。たばこやお酒は控え、あまり無理をしないようにゆっくりと過ごしましょう。
生理予定日を1週間ほど過ぎると、市販の妊娠検査薬でチェックをすることができます。
検査するタイミングが早いと正確な検査結果が出ないこともあるので、検査薬に記載されている使用目安を守りましょう。
妊娠検査薬で陽性が出た場合、妊娠している可能性が高いです。すぐに病院を受診して、お腹の赤ちゃんの様子を詳しく調べてもらいましょう。
受診には健康保険証、お薬手帳、可能であれば基礎体温表を持参します。内診をするので、生理用ナプキンもひとつ用意しておくとよいでしょう。
受診するタイミングの目安は、前回の生理開始日から数えて6週ほど経過したころです。あまり早いタイミングで受診しても赤ちゃんの心音が確認できず、再来院することになります。
ただし、強い腹痛があるときや出血など気になる症状があるときは早めに受診しましょう。
着床による下痢の可能性があるときは、どうやって過ごせばよいのでしょうか。つらさを和らげる過ごし方、着床による下痢のときに注意したいことをご紹介します。
下痢だけではなく「気分が悪い、胃がむかむかする」などの症状があるときは、つい冷たい飲み物や食べ物でスッキリさせたくなるかもしれません。
とはいえ冷たいものは胃腸に負担をかけて下痢を悪化させるおそれがあるので、できれば温かいものを食べて安静にしましょう。
衣服は血行を妨げないよう、締めつけの少ないゆったりとしたものを選びます。腹巻などを使用して、お腹まわりを冷やさないように心がけることも大切です。
下痢をしている間は、うどんやおかゆ、湯豆腐など胃腸に負担をかけない消化のよいものがおすすめです。繊維質なものや油っこいものは下痢を悪化させるおそれがあります。
また、妊娠すると免疫力が落ちて食中毒にかかりやすくなるため、生ハム、ナチュラルチーズ、魚や肉の刺身などの生ものは控えましょう。
下痢をしていると水分を消耗します。脱水に陥らないためにも水分補給が必要です。冷たい飲み物は体を冷やしてしまうので、常温またはほんのり温かい程度のノンカフェイン茶、白湯などを飲むようにしましょう。
吐き気をともなう場合は、急に水分補給をするとかえって症状がひどくなることがあります。胃腸に負担をかけないように少量ずつ飲みましょう。経口補水液を使うのもひとつの方法です。
「着床したと思ったのに、検査をしたら妊娠していなかった」ということもあるでしょう。なかなか着床しないときにできることはあるのでしょうか。
半年から1年ほど性交渉があるのに妊娠しない場合、その原因として見つかることが排卵障害、卵管障害、男性不妊の3つです。
いずれも検査しないと見つからないものです。もし発見できれば薬や処置で治療できることもあるので、まだ不妊検査を受けたことがない人は受診を検討してみましょう。
すでに不妊検査を受けて問題がなく、体外受精を繰り返しているのになかなか着床しないこともあるでしょう。このとき、女性の年齢が高いと「卵子の質」が低下していることが考えられます。
女性は35歳以上になると、卵子の染色体異常の割合が増えます。染色体異常のある卵子は妊娠に結びつきません。
35歳以上の女性が若い女性から卵子提供を受け、妊娠率が著しく向上したという報告があります。つまり、加齢による不妊では「卵子の染色体異常」がカギとなっているのです。
体外受精で受精させた胚は、グレードで見分けてもっとも質のよいものを移植します。ですが、グレードだけで染色体異常を見分けることはできません。そして、染色体異常のある胚を移植しても妊娠にいたることはないのです。
胚の染色体異常を見分けるにはどうしたらよいのでしょうか。現在、染色体異常を見分けるためにおこなわれているのが着床前診断です。
着床前診断は、体外受精で得られた受精卵の染色体を調べる検査です。正常な胚を見分けて移植をおこなうことで、妊娠率の向上や流産率の低下が期待できます。
体外受精はどうやったら受けられるのでしょうか。
日本国内で着床前診断(PGT-A)を受けられるのは、流産を繰り返している人、体外受精で妊娠をしなかったことが2回以上ある人に限られます。もし該当していれば、着床前診断を実施しているクリニックを受診してみるのもよいでしょう。
また最近では、受精卵または受精卵から取り出したDNAのみを海外研究機関へ輸送する着床前診断プログラムも登場しています。こうしたプログラムであれば、ご夫婦は日本にいながらにして受精卵の染色体の状況を確認することが可能です。
こちらもおすすめ
【医師監修】不妊検査って何をするの?検査内容や料金の目安について解説
着床して下痢になるのは、ホルモンバランスの変化によって自律神経が乱れることが原因です。下痢がひどいことがきっかけで流産することはないので、まずは体をいたわってゆっくりと過ごしましょう。出血や激しい腹痛、水分が十分に摂れないときは早めに受診してください。
何度も体外受精を繰り返しているのに着床しない場合、原因のひとつとして受精卵の染色体異常が考えられます。
株式会社B&C Healthcareでは、受精卵の染色体異常を調べることができる着床前診断プログラムを提供しています。詳細については無料の資料請求が可能なので、一度目を通されてみてはいかがでしょうか。