妊娠を希望する女性が注意しておきたい病気のひとつに「子宮頸管炎」があります。
子宮頸管炎にかかったまま治療を受けずにいると、妊娠中のリスクや不妊の原因につながることがあるのです。
この記事では、子宮頸管炎の症状やかかっていた場合の治療法、子宮頸管炎になりやすい人の特徴などについて解説します。妊活を考えている方、医師に子宮頸管炎を告げられた方はぜひご一読ください。
子宮頸管炎は、子宮の入口部分が何らかの原因によって炎症を起こすことをいいます。
炎症を起こす原因はさまざまですが、急に発症した子宮頸管炎は感染によるもの、慢性的な子宮頸管炎は感染以外の原因によるものであることが多いようです。
放っておくと子宮の奥や卵管にまで炎症が広がってしまい、骨盤内炎症性疾患(PID)につながることがあります。
時間が経つほど治療が困難になるので、子宮頸管炎を指摘されたらすぐに治療を開始し、完治するまでしっかりと続けることが大切です。
子宮頸管炎の原因は、大きく分けて感染によるもの、感染以外の原因で起こるものの二つです。
子宮頸管炎は、性感染症であるクラミジアや淋菌への感染によって起こります。ときに性器ヘルペス、性器マイコプラズマなどが原因となることもあるようです。
性感染症だけでなく、大腸菌やブドウ球菌といった常在菌で子宮頸管炎にかかることもあります。免疫機能が落ちていたり、清潔が保たれていなかったりすることが一因となります。
また、加齢によってホルモン分泌が少なくなると膣の自浄作用が低下するため、細菌感染を起こしやすくなります。
感染ではない原因としては、ペッサリーやバリア式避妊具などの異物、膣洗浄や避妊クリームなどに含まれる化学物質があります。
ラテックス(天然ゴム)アレルギーも炎症を起こす原因のひとつです。ラテックスアレルギーの方は、ポリウレタンやラムスキンなどのラテックスフリー素材のコンドームを使用することが勧められます。
子宮頸管炎は、25歳未満の若い人で起こりやすいといわれています。
複数のセックスパートナーがいたり、性行為の際にコンドームをつける習慣がなかったりする場合は子宮頸管炎になるリスクが高まるため、注意が必要です。
また、通常は膣の自浄作用によって常在菌の感染を防いでいますが、分娩や中絶、性行為などで子宮頸管に傷がある状態だと感染が起こりやすくなります。
コンドームやタンポンの取り出し忘れも雑菌の繁殖につながるので、きちんとケアして清潔を保つようにしましょう。
子宮頸管炎は無症状であることが少なくありません。
症状がある場合、黄色~緑色の膿のようなおりもの、月経以外の不正出血、性交や排尿時に感じる痛みなどがあります。
子宮内膜や骨盤腹膜にまで炎症が広がっているケースでは、下腹部痛や発熱などがみられます。
クラミジアによる子宮頸管炎は症状を感じにくいため、子宮や卵管が癒着を起こし、不妊につながることがあります。
子宮頸管炎にかかった場合、どのように治療を進めていけばよいのでしょうか。治療の流れについて具体的にまとめました。
若い方で急性の子宮頸管炎を起こしている場合は、クラミジアまたは淋病の感染が疑われます。
まずは内服薬または筋肉注射による抗菌薬投与で治療をしつつ、採取したおりものから原因菌を特定します。原因菌が特定されれば、それに合った治療を進めていきます。
クラミジア感染症の場合はアジスロマイシンやドキシサイクリンの内服、淋病の場合はセフトリアキソンの筋肉注射に加えてアジスロマイシンの内服をおこないます。
これらの治療で効果が見込めないときは、性器マイコプラズマ、性器ヘルペス、トリコモナス症などの感染症治療を開始することもあります。
性感染症が原因の場合はパートナーも感染している可能性が高いので、同時に検査・治療をおこないます。自分とパートナー双方の治療が終わるまでは、性行為は控えなければなりません。
子宮頸管炎で注意したいのは再感染のリスクです。クラミジア感染による子宮頸管炎の場合、13~30%が再感染を繰り返すといわれています。
治療が終了したら3~6ヶ月の間にもう一度受診をして、再感染を起こしていないかチェックしましょう。
生活習慣の不規則で免疫力が落ちてしまい、感染症にかかりやすくなっているケースもあります。食事や睡眠に注意して、感染しにくい体づくりに努めることもポイントです。
子宮頸管炎になってしまうと、妊娠に影響することはあるのでしょうか?妊娠前にかかるケースと妊娠中にかかるケース、それぞれの影響について解説します。
クラミジアによる子宮頸管炎は、重症化すると卵管性不妊の原因になります。炎症が広がって卵管、卵管采、卵巣などに癒着を起こしてしまうのです。
不妊検査では血中のクラミジア抗体について検査をします。もし陽性の場合は卵管造影検査をおこない、癒着や卵管のつまりがないかを調べます。
軽度の癒着であれば治療によって改善しますが、重度の場合は体外受精や顕微授精などが必要になることもあります。
妊娠中の子宮頸管炎は、絨毛膜羊膜炎を引き起こす原因になります。
絨毛膜羊膜炎とは、赤ちゃんを包んでいる膜が炎症を起こすことです。子宮が頻繁に収縮してしまうため、子宮口が開いたり破水したりなどのトラブルが起こり、早産や流産につながるとされています。
赤ちゃんに感染が及んだ場合、新生児肺炎や敗血症を起こすこともあります。
妊娠中に子宮頸管炎が分かったときは、妊娠中でも使える抗菌薬などで治療をおこないます。
子宮頸管炎が不妊の原因になることはありますが、早期に治療を受けていれば通常問題はありません。
また、卵管性不妊を引き起こしている場合でも、癒着やつまりを治療すれば妊娠する可能性は高まります。
適切に検査や治療をしたにも関わらず妊娠しないときは、ほかの原因が関与しているのかもしれません。たとえば、「加齢によって増える受精卵の染色体異常」も不妊原因のひとつです。
受精卵の染色体異常とは、卵子または精子に生じるエラーによって受精卵の染色体に異常をきたすことです。
受精卵の染色体異常はごく一般的に起こる現象で、ご夫婦ともに健康でも一定の確率で生じます。
ただし、染色体異常の割合は年をとるにつれて増加することが分かっています。よく「35歳以上になると妊娠率が低下する」といいますが、それは受精卵の染色体異常が増加することが一因となっています。
染色体異常を予防する有効な方法はいまのところ確立されておらず、治療する方法もありません。
染色体異常を治療することはできませんが、見分けることはできます。
着床前診断は、体外受精で得た受精卵の一部を採取し、染色体に異常がないかを見分けることができる検査です。
着床前診断で問題がないと判断された胚を移植すれば、流産率は低下、ひいては生児を得られる確率が高まります。
とくに「体外受精をしても成功しない」「妊娠はするけれども初期のうちに流産してしまう」というケースでは、着床前診断の検討価値はあるでしょう。
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【医師監修】染色体異常と遺伝子異常の違いと、着床前診断で防ぐための方法について
子宮頸管炎が悪化すると、不妊をまねいてしまうリスクがあります。もし病院で指摘された場合は、早めに完治を目指しましょう。
子宮頸管炎の治療が問題なく終わっているのに妊娠しないときは、染色体異常によるリスクも考えられます。
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