「月経がある=排卵している」と思いがちですが、実は月経があっても排卵が起こっているとは限りません。無排卵月経といって、月経があるのに排卵がない状態に陥っている女性は案外多いのです。
無排卵月経はどのような原因で起こるのでしょうか。また、無排卵月経ではどのような症状が起こるのでしょうか。
今回は、無排卵月経を見分ける方法や対策についてお伝えしていきます。
月経のような出血があるのに排卵が起こっていないことを「無排卵月経」、医学的には「無排卵周期症」といいます。排卵がないと妊娠しないため、不妊原因のひとつとなります。
無排卵月経は、見かけ上は月経が起こっていて痛みなどの症状もないため、自身でもなかなか気づくことができません。
月経不順や不正出血、不妊検査をきっかけに婦人科を受診して、無排卵月経と診断されるケースが多いようです。
通常の排卵では、卵巣刺激ホルモン(FSH)によって卵胞が成熟し、成熟した卵胞からエストロゲンが分泌されて子宮内膜を厚くします。
エストロゲンがたくさん分泌されると、脳から黄体化ホルモン(LH)が急激に放出されます。すると、24~36時間後に卵胞から卵子が飛び出します。これが排卵の起こるメカニズムです。
排卵したあとの卵胞からは黄体ホルモンが分泌され、受精卵を迎えるために厚くなった子宮内膜を維持します。
このとき受精・着床すれば妊娠が成立しますが、そうでない場合は子宮内膜が剥がれ落ちます。このときの出血が月経です。
無排卵月経が起こる原因は、卵巣刺激ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)のアンバランスです。
これらのホルモンがうまく分泌されない、または両者のバランスが崩れてしまうと、排卵が起こりません。
また、排卵が起こらなければ黄体ホルモンが分泌されないため、厚くなった子宮内膜を維持できなくなります。子宮内膜が持ちこたえられずに崩れ落ちることで、月経と同じような出血が起こります。
排卵がないのに出血が起こるのはこのためです。ただし通常の月経と違ってホルモンで制御されていないので、月経不順や不正出血が起こりやすくなります。
思春期や更年期はホルモンバランスが不安定なので、無排卵月経になりやすい時期です。
20~30代女性の場合、ストレスや生活習慣の乱れが引き金となってホルモンバランスが崩れてしまうことがあり、これも無排卵月経の原因になります。
たとえば、次のような事柄に思い当たる場合は注意が必要です。
・結婚や就労、引っ越しなどの環境変化によるストレス
・働きすぎ、睡眠不足
・やせすぎ、太りすぎ
・体重の急激な変化
上記のような場合、ホルモンバランスに影響して無排卵月経を起こしやすくなります。
また、多嚢胞性卵巣症候群、高プロラクチン血症、甲状腺疾患などの疾患によって無排卵月経になることもあります。
無排卵月経で起こる症状についてまとめました。当てはまる項目がないか、ご自身でチェックしてみましょう。
通常、月経は25~28日の周期でめぐります。しかし、無排卵月経では24日以下と短かったり(頻発月経)、逆に39日以上と長かったり(稀発月経)することがあります。
通常の月経日数は3~7日間です。ところが、無排卵月経の場合は2日以下で終わってしまったり(過短月経)、または8日以上出血が続く(過長月経)ことがあります。
通常、1周期あたりの経血量は20~140mlです。
しかし、無排卵月経ではほんの少量しか出血しなかったり(過少月経)、反対に1時間ごとのナプキン交換では間に合わないほど多すぎたり(過多月経)することがあります。
茶色くかすれたような経血しか出ない場合や、血に混じってレバーのような塊がたくさん出る場合も要注意です。
無排卵月経では、月経以外の時期に性器出血がみられることがあります。
不正出血には排卵出血や着床出血などの心配のない出血もありますが、無排卵月経の不正出血と見分けるのは困難です。とくに月経不順をともなう場合、無排卵月経の可能性を考える必要があります。
月経が正常な場合、ホルモンバランスの変化によって基礎体温は高温期と低温期の二相に分かれます。
しかし、無排卵月経では排卵が起こらないため、基礎体温が低温期のまま横ばいのグラフを示すのです。これを一相性といい、このような基礎体温の場合は無排卵月経になっている可能性があります。
一般的に、無排卵月経は生理痛を感じにくいといわれています。
そもそも生理痛は、子宮を収縮させて子宮内膜を排出するプロスタグランジンの働きによって起こります。プロスタグランジンは黄体ホルモンが子宮内膜に作用することによって増加しますが、無排卵月経は黄体ホルモンが十分でないため、プロスタグランジンが増えません。
そのため、一般的な月経とは違って生理の痛みが生じにくいのです。生理痛がないというだけで無排卵月経かどうかは分かりませんが、月経不順や不正出血などもみられる場合は注意しましょう。
無排卵月経は婦人科で検査を受ければ分かりますが、もし診断を受けた場合はどのように治療すればよいのでしょうか。一般的な治療法についてまとめました。
無排卵月経の治療では、排卵誘発剤を用います。排卵誘発剤でよく使われるのがクロミフェンとゴナドトロピンです。
クロミフェンは内服薬で、エストロゲンが低下していると視床下部に錯覚させることで卵胞の発育を促します。状態に応じてhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を投与することもあります。
ゴナドトロピンは注射薬で、クロミフェンで排卵しない場合に使われます。卵胞を発育させるためのhMG(閉経後ゴナドトロピン)注射を打ち、卵胞が発育したら排卵作用のあるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)注射を打って排卵を誘発します。
また、高プロラクチン血症による無排卵月経の場合、プロラクチン濃度を正常に戻すと排卵が起こります。甲状腺が原因の高プロラクチン血症では甲状腺ホルモン補充をおこないますが、原因が分からない高プロラクチン血症ではドパミン作動薬という薬でプロラクチン濃度を下げていきます。
無排卵月経はストレスや生活習慣の乱れが関係していることが多く、十分な睡眠や運動をして過ごすことで改善する見込みがあります。
太りすぎは無排卵月経の原因になるので、運動や適切な食事で適正体重に近づけるとよいでしょう。断食などの無理なダイエットは避け、バランスのよい食事と運動で体重を落としていくのが理想です。
ストレスもホルモンバランスの乱れを引き起こすので、十分な睡眠をとる、仕事や家事を詰め込みすぎないなどの工夫が必要です。
冷えは血流を妨げてホルモンの働きを弱めてしまうため、できるだけ身体を温めるような食事や服装を選ぶようにしましょう。
排卵の有無は婦人科で検査すればすぐに分かります。しかし、検査の結果できちんと排卵していたのに、なかなか妊娠の兆しが見えないという方もいらっしゃるでしょう。
排卵しているのに妊娠しないのはどうしてなのでしょうか。さまざまな原因が考えられますが、35歳以上の女性で考えられるものとしては卵子の染色体異常が挙げられます。
卵子の染色体異常は若い女性でも起こりますが、35歳を超えるあたりから染色体異常の卵子の割合が増加するといわれています。
染色体異常のある卵子は、精子と受精して着床するだけの力がありません。もし妊娠までこぎつけたとしても、初期のうちに流産してしまう可能性が高いのです。
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35歳頃からなぜ卵子が老化するのか、そのメカニズムは今のところ不明で、治療する手立てもありません。
しかし、治すことはできなくても方法はあります。それが着床前診断という染色体検査です。
着床前診断は、体外受精によって得た受精卵の染色体を調べ、異常がないかどうかを確かめる検査です。染色体異常のない胚を子宮へ移植すれば、妊娠率の向上や流産率の低下が見込めます。
着床前診断は体外受精が前提であり、自然妊娠を希望される方には遠い話のように思われるでしょう。しかし、将来もし不妊という壁が立ちはだかったそのときには、着床前診断が突破口を開く糸口になるかもしれません。
無排卵月経は、月経があるのに排卵が起こっていない状態です。月経不順や不正出血、基礎体温表の異変となって現れることがあるので、おかしいと思ったときは婦人科に相談してみましょう。
きちんと排卵が起こっていても妊娠しない場合、卵子の染色体異常が原因である可能性があります。株式会社B&C Healthcareでは、日本にいながらにして受けられる着床前診断をご案内しています。着床前診断でどんなことができるのか、気になる方は一度資料を取り寄せてみてはいかがでしょうか。